自覚 ページ18
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「ねね、赤葦。あれやろうよ、金魚すくい!」
「次はあれにしよ!ヨーヨー釣り!」
「じゃあ射的!ね、あかーし!」
「うーん、じゃあもう次は────」
次々に俺に勝負を仕掛けては負けるAさんに、この人実は年齢詐称しているんじゃないかと疑うほどの無邪気な姿に、俺も楽しまずにはいられなかった。
たまに、どっちが先輩なのかわからなくなる。
そんな俺を不思議そうに見ては「赤葦笑った!」とケタケタ笑う彼女に、俺は何とも言えないもどかしい気持ちになった。
言葉では言い表せられないような、この気持ちを【恋】とでも呼ぶのだろうか。
「もうすぐ花火だね。私あんまりお祭りとか来たことなくて。だって人が多くて怖いじゃない?」
「今日は、楽しめましたか」
「勿論!」
いつもより小さい歩幅。
「赤葦は好きな子とかいないの?」
「いませんよ」
「私はね、実はいるんだ〜」
「もしかして木兎さんですか」
「違うよ馬鹿!」
そんな他愛のないやり取りをしながら歩いていると、「赤葦ちょっと待って」とAさんが俺の袖を引いた。
振り返ると、足を引きずる彼女が「も少しゆっくり歩こう」と笑った。
「すみません、気づかなくて」
注意していたはずなのに。自分の情けなさに少し腹立たしくなる。
Aさんを近くの石垣に座らせて、俺は財布に忍ばせておいた絆創膏を取り出す。
「え、赤葦絆創膏持ってるの!?女子力じゃん!」
「足、バタつかせないでください」
俺はしゃがんでAさんの靴擦れをした足の指に絆創膏を巻いた。
「ありがとう赤葦」
「いえ」
靴擦れをした指に触れないように、草履を履かせて立ち上がる。
「飲み物、買ってきますね」
「私も行く」
浮いた足を地面につけて立ち上がろうとするAさんを、俺は制するように肩に触れる。
「すぐ戻ってくるので、ここで待っててください」
そう言うと、Aさんは眉尻を下げて「ごめんね、ありがとう」と言った。
謝ることでもないのに、謝るのは貴方の異変に気づけなかった俺の方なのにと思いながら、俺は人混みへと入っていった。
「げっ」
俺は目的の屋台の列に顔を歪めた。長蛇とまではいかないが、そこそこの列。
一人で待たせているAさんのことを考えて、俺はもう少し奥の屋台へと走った。
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時