ジャージ ページ29
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そんな懐かしいことを思い出しながら歩いていると、頭から水を浴びた。
*
「ねえ、見て赤葦」
「なんですか木兎さん」
「Aが俺の部活のジャージ着てる。可愛い」
「木兎さん、まず髪を拭いてあげないと風邪ひきます」
「いだっ!赤葦!髪抜ける!髪抜ける!」
「あかーし!もっと優しく扱ってやってくれ!」
「ぶえっくし!」
「うわ、くしゃみするならこっち向かないでくださいよ!」
昔のことを思い出しながら校舎内を歩いていると、花壇の花に水を与えていた女子生徒が友達に名前を呼ばれた拍子に振り返り、持っていたホースの水を、たまたま通りかかった私が浴びた。
そしてたまたま通りかかった木兎に強制的にバレー部の部室に連れてこられた。
そうして今に至る。
「そういえば、Aさんは俺のジャージも着たことありますよね」
「は!?どういうことだあかーし!」
急に言い出す赤葦に、私の心臓がうるさく鳴り出した。
余計なこと言うなと赤葦を小突くと、彼は逃げるように天井を仰いだ。
「なぁ、Aどいういうことだよ!なんで俺のじゃなくて赤葦のジャージ着たことあるんだよ!?」
「ち、違うよ木兎!」
必死に否定するも虚しく、木兎はいじけるようにそっぽを向く。
「ねえ、木兎!ほら!私今木兎のジャージ着てるよ!ほら見て!」
「…彼シャツならぬ、彼ジャージ」
ポツリ呟く木兎は、唇を尖らせてる。
こうなったら、どうしようもないんだよなあ。
と、息を吐くと。
「木兎さん、なにを真に受けてるんですか。Aさんが俺のジャージ着るわけがないじゃないですか」
「え!?なに、着てないの!?本当か!」
赤葦の言葉に食いついた木兎にこくり頷くと「良かったー!」と言いながら木兎が私をぎゅーっと抱きしめた。
あぁ、木兎の匂い、安心する。
そんな安心感に浸りながら、私は赤葦を横目で睨む。
本当に、何がしたいのかわからない。
自分から言っておいて、結局助け舟出すんじゃん。
「良かったー、心配させんな!」
「木兎さん、Aさん潰れますよ」
「おー!悪い悪い!」
あの雨の日。
赤葦が私を助けてくれたのは確かだけど。
あの後から、自分が木兎に恋をしていると自覚して逃げた日から、私は木兎を避けてしまうようになったんだ。
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アニメしか勝たんっ!! - やっぱり、木兎さんはかっこいい...! すっごくキュンキュンしました! それと、赤あしの片思い... 素敵な作品ありがとうございました!! (2021年9月6日 19時) (レス) id: a9d6af11eb (このIDを非表示/違反報告)
しきし(プロフ) - 木兎が好きで色々な木兎作品を読みますが、結局小鈴さんのこの作品に戻ってきてしまいます、何度読んでも好きです!! (2020年8月21日 20時) (レス) id: 46b82dd2cd (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 尊い。私ごときの語彙力じゃ表せないです。なんか、もう、尊い。 (2019年11月24日 22時) (レス) id: 4e49721770 (このIDを非表示/違反報告)
c.f(プロフ) - 番外編読みました。私のツボを抑えておられますね…最高です。そして実は短編集とかもいける口では…?と思ってしまうほど纏まった内容でドキドキが止まりませんでした!また更新楽しみにしてます! (2019年10月4日 21時) (レス) id: 05c431cb99 (このIDを非表示/違反報告)
江(プロフ) - 通知がきて飛んで来ました!やっぱり木兎さんの書き方上手ですね。強引な感じも好きです。そして作者さんも好きです。これからも楽しみにしてるので更新頑張ってください!!! (2019年10月3日 18時) (レス) id: 1247715456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年7月30日 20時