後輩との出会い ページ23
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息が上がる。苦しい。足がもつれそう。
か、階段…!転ぶ!
「ちょっと、ねえってば!」
手を引かれるがまま走り続けていた足が止まったのは渡り廊下。
私は膝に手をついてぜーはーぜーはー息を整えているにも関わらず、ボクトコウタロウは呼吸一つ乱れる様子もなく私に背を向けている。
流石運動部だと感心していると、
「急に走らせて悪かった」
目の前にある広い背中がしゃがみ込む。
「…中身、見たんだよな…?」
小さい声で言う彼に、私も釣られて声のボリュームを抑えて「ハイ」と返事をした。
「これ、俺の大事なノートなんだ。カホーと言っても過言じゃねえ」
「カ、カホー…?」
カホーって、家宝のこと?
それは流石に言いすぎなのでは…?と思いながら首を傾げる。
後日そのノートの裏表紙に小さく【家法】と書いてあるのを知って、‟木兎家ってそういうタイプの家なのか”と驚いていたが、ただの木兎の誤字で、私が想像した通りの木兎の個人的な【家宝】であったというのは、完全なる余談である。
「ちょっとこっち来て」
彼に手招きされ、私も彼の隣にしゃがむ。
ペラペラとノートをめくり、開かれた【エースの心得】のページ。
「これ、」
彼が言いかけたと同時に、目の前の体育館のドアが開いた。
「木兎さん」
―――今思えば、私と赤葦の醜い争いは、すでにこの時から始まっていたのかもしれない。
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アニメしか勝たんっ!! - やっぱり、木兎さんはかっこいい...! すっごくキュンキュンしました! それと、赤あしの片思い... 素敵な作品ありがとうございました!! (2021年9月6日 19時) (レス) id: a9d6af11eb (このIDを非表示/違反報告)
しきし(プロフ) - 木兎が好きで色々な木兎作品を読みますが、結局小鈴さんのこの作品に戻ってきてしまいます、何度読んでも好きです!! (2020年8月21日 20時) (レス) id: 46b82dd2cd (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 尊い。私ごときの語彙力じゃ表せないです。なんか、もう、尊い。 (2019年11月24日 22時) (レス) id: 4e49721770 (このIDを非表示/違反報告)
c.f(プロフ) - 番外編読みました。私のツボを抑えておられますね…最高です。そして実は短編集とかもいける口では…?と思ってしまうほど纏まった内容でドキドキが止まりませんでした!また更新楽しみにしてます! (2019年10月4日 21時) (レス) id: 05c431cb99 (このIDを非表示/違反報告)
江(プロフ) - 通知がきて飛んで来ました!やっぱり木兎さんの書き方上手ですね。強引な感じも好きです。そして作者さんも好きです。これからも楽しみにしてるので更新頑張ってください!!! (2019年10月3日 18時) (レス) id: 1247715456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年7月30日 20時