忘れ物 ページ22
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「木兎?なぁ、木兎いるかー?」
「木兎ならチャイムと同時に出て行ったけど」
「あ〜そっか。悪い、木兎もう部活行ったらしいわ」
放課後。
ノートを返すべく彼のクラスに来たが、もういないらしい。
「部活って、どこの?」
「え、知らねえの?」
私の質問に、ボクトコウタロウ探しに呼び止めた男子が驚いたように言う。
「バレー部だよバレー部。結構有名だと思うけど」
じゃあ仕方ない。
このノートは机に置いておくか、クラスの誰かに渡しておいてもらおうと思った矢先―――、
「うぉぉぉおお、忘れ物忘れ物!」
「お、木兎!?」
タイミングよく現れたジャージ姿のボクトコウタロウは、私と男子の間を通って慌てた様子で教室に駆け込んだ。
教室を覗くと、彼は何やらガサゴソと机の中を漁っている。
次から次へと出てくる出てくる大量のプリントたち。
どうやら整理整頓ができないタイプらしい。
「あ〜そうだった、無くしたんだったぁ!ぬぁ〜、忘れてた、くっそ〜!」
教室にいた生徒全員が、彼の慌てっぷりに何事だと注目している中で、彼は膝をついて頭を抱えた。
「なんだよ木兎、うるせえな!」
と言われる中、彼は頭を抱えたまま「ロッカーにも部室にもねえし、一体どこにいったんだ!」とボソボソと言いながら項垂れていた。
も、もしかして彼が探しているものって、このノートでは…?
「おい木兎」
私がさっき呼び止めた男子が、ボクトコウタロウを呼ぶと彼はこちらに顔を向けた。
「この子が、お前に用があるんだって」
男子が私を親指で指すと、ボクトコウタロウはふらふらとした足取りでこちらに歩いてきた。
なんだか、目が虚ろだなぁ。
上から見る彼とはまるで別人。
「これ、私の席に忘れてってたの、返しそびれてて」
ノートを差し出すと、ボクトコウタロウは見る見るうちに目に光を取り戻していく。
そして彼は受け取ったノートをめくって中身を確認した後、
「見た!?」
と、ノートを抱えた。
見た、って…ノートの中身のことだよね…?
頭に浮かんだくしゃくしゃのページに書かれた【エースの心得】の文字。
「…ごめんなさい。見ました」
正直に頭を下げると、彼は驚いた表情で、雷のエフェクトがかかりそうなポーズをとった。
「ちょ、ちょっと!」
すると急にボクトコウタロウが私の腕を引いて走り出した。
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アニメしか勝たんっ!! - やっぱり、木兎さんはかっこいい...! すっごくキュンキュンしました! それと、赤あしの片思い... 素敵な作品ありがとうございました!! (2021年9月6日 19時) (レス) id: a9d6af11eb (このIDを非表示/違反報告)
しきし(プロフ) - 木兎が好きで色々な木兎作品を読みますが、結局小鈴さんのこの作品に戻ってきてしまいます、何度読んでも好きです!! (2020年8月21日 20時) (レス) id: 46b82dd2cd (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 尊い。私ごときの語彙力じゃ表せないです。なんか、もう、尊い。 (2019年11月24日 22時) (レス) id: 4e49721770 (このIDを非表示/違反報告)
c.f(プロフ) - 番外編読みました。私のツボを抑えておられますね…最高です。そして実は短編集とかもいける口では…?と思ってしまうほど纏まった内容でドキドキが止まりませんでした!また更新楽しみにしてます! (2019年10月4日 21時) (レス) id: 05c431cb99 (このIDを非表示/違反報告)
江(プロフ) - 通知がきて飛んで来ました!やっぱり木兎さんの書き方上手ですね。強引な感じも好きです。そして作者さんも好きです。これからも楽しみにしてるので更新頑張ってください!!! (2019年10月3日 18時) (レス) id: 1247715456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年7月30日 20時