ぎゅっと、14 ページ14
「…………野渡」
「んー? なんだ、萩原」
呼びかければ返事があって、耳に押し当てた胸からはしっかり鼓動を刻む音がきこえている。
その事にどうしようもなく安心して、小さくため息。
撫でられっぱなしの頭に、柔く抱き込まれた背中。未だに涙は止まらないけど、酷く心地よい。
ずび、鼻をすすって口を開く。
「俺、野渡が好き」
「っお、今??」
戸惑った声が聞こえて、少し胸がすっとする。
胸に押し当てたまんまの耳から、早くなった鼓動が聞こえてきた。
「うん、今。別に付き合ってなんて言わないよ。ただ伝えたかっただけ」
「……弱ってんなぁ、萩原は」
「…………誰のせいだと」
「はいはい、俺のせいだね。ごめんって。…………うん、そうだな…うん」
どこか自分を納得させるように何度か頷いた後、野渡は俺を撫でるのをやめた。
それを寂しく感じながら、仕方ないと己を窘めて胸から頭をどけると、すぐさま顔を掴まれる。
いきなりな上に力が強くて、抵抗も出来ずに引っ張られた。
「んっ」
唇に柔らかな感触。
野渡の、伏せられた長い睫毛が窓から射し込む夕日に照らされて、涙の膜が張った俺の瞳と相まりとても輝いて見えた。
───きす、されてる。
ぺろり、ひと舐めされてすぐ離された唇。
再び至近距離で絡まった視線。
「……俺も、すき」
呟くように囁かれた言葉。
すぐさま重なった唇は、今度は離れることは無かった。
「ん、んんっ…まっ、て……!!」
ベッドに手をついて、なんとか顔を離す。
きっと顔は真っ赤で、涙だって零れたまんまだ。
全然カッコつかないけど、言うしかない。
「同情とか、要らないから……! 今までそんな振りしてなかった癖に! 伊達に聞いた、俺の気持ち知ってたんだろ!」
「……うん、知ってたよ」
怒鳴る俺と対照的に、野渡は冷静だ。
「知ってた。俺なんかを好きになるなんて、馬鹿だなって思ってた。だって俺は、萩原が思う程良い奴じゃねぇから」
面倒臭い奴だ、と野渡は言葉を続ける。
「面倒臭くて、嫉妬深い。独占欲だって強いし、優しくだってしてやれない。現に、今俺はお前に許可も取らずに唇を奪った。だから、知らない振りしてれば、お前はこんなに酷い俺の事なんて、すぐに諦めてくれると思ってたんだ」
「…………」
初めて聞かされる事に、開いた口が塞がらなかった。
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和美/美香 - どういたしまして♪いえいえ。 (2019年3月20日 23時) (レス) id: 1f2c06e01c (このIDを非表示/違反報告)
フィラン(プロフ) - さーもんまりねさん» わ〜、わかりみありますか〜!! こちらこそお読み頂いて感謝です〜!! (2018年11月30日 21時) (レス) id: e3629716db (このIDを非表示/違反報告)
さーもんまりね(プロフ) - 受け主地雷分かりみしんどいです。攻め主君最高でございました!!素晴らしい作品をありがとうございました! (2018年11月30日 0時) (レス) id: cf8a3e5bab (このIDを非表示/違反報告)
フィラン(プロフ) - k373さん» ありがとうございます〜! そう言っていただけると書いてて良かったなぁ、って思えます(つω`*) これこらも楽しんで頂けるように精進して参ります(*´▽`) (2018年11月20日 23時) (レス) id: e3629716db (このIDを非表示/違反報告)
フィラン(プロフ) - 和美/美香さん» ありがとうございます! 楽しんで頂けたのならなにより♪ (2018年11月20日 23時) (レス) id: e3629716db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フィラン | 作成日時:2018年11月7日 0時