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翼を。35 ページ40
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「＿＿はじめまして、媛羅木Aです。幸の義兄やってます」
何かが変わったあの場所で、そう言ってから数日が経っていた。
オレの日常は大きく変わった。
毎日誰かと笑って、協力して、感謝したり。当たり前が当たり前じゃないと改めて感じた。
監督も劇団員もオレのことを歓迎してくれて、一部にはあだ名で呼ばれていたりする。
何より驚いたのが、つむとたーちゃんだけでなく、臣さんまでもがここに所属していたことだ。顔を合わせたときに二人して固まったことが、まだ記憶に新しい。
「(オレは、何を恐れていたんだろう)」
すぐ近くに頼れる人達がいたというのに、誰にも頼ることをせず、唯怯えていたなんて。オレにはとんだ馬鹿野郎だ。
世界はオレの知っているあの場所だけではない。
昔のことを忘れることはなくても、前へと進むことはできる。
「Aくん、ちょっといい？」
「あ、待って、今行く」
前に進まなくては。
オレのために、皆のために。
「(……ありがとう、皆)」
雲ひとつない空を見上げながら、小さく笑った。
＿＿その青が黒く染まることも知らずに。
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作者名：彩崎葉 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/
作成日時：2017年4月3日 22時
