翼を。32 ページ37
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「ただ、い……ま」
目の前の状況を頭が処理しきれず、口は一文字を結び、目を見開いたまま固まってしまう。
何で、どうして、なんて。回らない頭は答えのない問いばかりを繰り返して、この状況を理解しようとしない。
いや、本能的に拒んでいるのかもしれない。
「……久しぶりだね、A」
「なん、で……つむとたーちゃん、が……?」
「……話は、家の中でだ」
二人を後ろに携えた幸は、何も語らずに、先導をきるように奥へと消えていく。
二人は、俺の腕を引いて、幸のあとを追った。
「__まず、聞いていいかな」
簡素なリビングで思い思いに座った僕達の間に、気まずい沈黙が流れる暇も与えず、つむは真剣な目でそう言った。
「もう、演劇は嫌いになった?」
息が詰まった。
辛い、痛い、重い枷。
首が絞まる。息ができない。苦しい、ツラい、やめたい、できない、やりたくない、なんで、どうして、イヤだ、……っ。
「Aの本当の気持ちが聞きたいんだ」
その優しげな声音を降り注ぎながら、変わらず真剣な目で、表情で、彼はオレを見ていた。
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作者名:彩崎葉 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/
作成日時:2017年4月3日 22時