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鍵を。29 ページ33







 まさか、アイツだなんて、思いもしなかった。

 いや、心のどこかではわかっていたんだ。……唯、認めたくなかっただけで。


『おい、どういうことだ紬』

『……あの容姿は、確かに彼だった。幸くんの義兄は媛羅木Aだ、間違いないよ』

『嘘だろ、そんなわけ』

『嘘じゃない。オレの兄貴は媛羅木A。多分、アンタらが言ってるのと一緒』


 七尾が珍しく、朝早くから起きてきたあの日、口に広がったあの味。昔とは比べ物にならないほど変わっていたが、微かに懐かしい味がした。

 それが、あの違和感の正体。


「……お前はずっと、近くにいたんだな」


 穴だらけだったピースがはまっていく。

 全てを理解した今、紬に話さないとならないことがある。いや、瑠璃川にも、か。

 俺は紬のように、唯嬉しがってはいられない。……いや、紬も薄々気づいているか。だからこそ、話さなければならない。

 俺だけが知っているAのこと。そして、"翡翠"のことを。

 あの悲劇は繰り返させない。

 ……もう、あの感覚だけは、味わいたくないんだ。




翼を。30→←鍵は。28


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作者名:彩崎葉 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/  
作成日時:2017年4月3日 22時

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