翼を。26 ページ30
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真新しい電子音と共に、海の底から意識が持ち上げられる。
気だるげに光を受け入れれば、光になれていない視界がチカチカと反抗した。
「……眠い」
昨日は何故か寝付きが悪く、時計を確認すると睡眠時間は3時間足らず。お陰で頭の中に靄がかかったような感じがし、とても気持ちが悪い。
気分が優れないと、泣いて喚いても今日は仕事だ。休むという選択肢など、端から存在しなかった。
「(……あぁ、そうだ。今日は試作品を見てもらうんだった)」
覚醒しきっていない頭でぼんやりと思考しながら、ゆっくり身支度を終わらせていく。
そのまま玄関までふらふらと歩いていき、鞄を取りながら靴を履く。
靴を履き終わり、何かおかしな所がないか確認するため、鏡へと視線を向けた。
そこには眠たそうな顔の仮面を被った一人の道化師か映りこんでいた。俺はその頬に触れると、一度目を伏せてから笑う。
「今日も、いつも通り」
鏡に映る道化師は口許に三日月を描くと、消えていった。
「(……いってきます)」
いつも通り、心の中でそう呟きながら扉を閉め、洋菓子店へと歩を進める。
鞄の中でチカチカと何かが光っていた。
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作者名:彩崎葉 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/
作成日時:2017年4月3日 22時