【A3!】籠の鳥【男主】 (ページ17)

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翼を。14 ページ17

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「あぁ、此処にいたのか」

　そう言いながら近寄ってきたのは、顔に傷痕がある優しげな雰囲気を漂わせた男。

「臣さん」

　伏見臣、葉星大学(ここ)の３年で、料理繋がりで知り合った先輩である。

　……まぁ、知り合った方法が特殊だからか、関係も少し特殊で、先輩後輩とか関係なしに空き時間に会って話したりしている。

　臣さんは聡明だし、少しお兄さん気質―彼の場合はお母さん気質とも言う―だからあまり気を遣わずに済むから楽だ。

「何かありました？」

「いや、久しぶりに話したいと思ってな」

「あぁ、そういうことですか」

　実は言うと、彼とはこれといった接点がない。

　そのため、気が向いたら、話したくなったら相手の所に行くことが定番になっている。

「……楽しそうですね」

　臣さんの顔に視線を向けていると、ぽつりと零れ落ちた小さな言葉。

　それは唯感じとっただけのものであり、違う何かでもあった。

「楽しそう、か……確かにそうかもな」

「理由は聞いても？」

「隠す必要もないしな、」

　＿＿劇団に入った。

　その言葉は淡々としていて、それでいて暗闇をさ迷わせるには十分すぎるものだった。

　

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