翼を。13 ページ16
．
「太一、ねぇ……」
俺は麗らかな陽気が眠気を誘う中庭で、昨日のことを思い出しながら、本を読んでいた。
勿論そんなことをしていれば本の内容はぼんやりとしか入ってこず、終いには虚空へ視線を投げ掛けている。
僕は一つため息を吐くと、背もたれに体重を預けるように座り直した。
「(……もう、関わらないと思っていたのに)」
私の自慢である義弟、幸は珍しくボロを出した。
それはとても単純で、意識していても抑えることが難しいこと。
"親しい者の呼び名"だ。
太一という名前、そして俺の何かに気づいたこと……その二つが重なってしまった以上、一つの仮定ができてしまう。
幸にバカ犬、そして太一と呼ばれていたあの男は、GOD座の七尾太一でほぼ間違いないだろう。
……まぁ、
「(これからはもう行けないな)」
アイツ以外にもGOD座関連の人物がいるかもしれない所に、好き好んで行くほど私は馬鹿じゃない。
幸には悪いが、当分は寮に行くのは控えさせてもらおう。
まぁ、衣装も出来上がったし、僕の出る幕はないだろうけど。
．
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作者名：彩崎葉 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/
作成日時：2017年4月3日 22時
