【A3!】籠の鳥【男主】 (ページ12)

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翼は。09 ページ12

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「……幸チャン、あの、」

「それ以上言うな」

　寮の窓から覗く遠ざかっていく背中。

　その危なげな背中を押すことができたら、あの寂しそうな手を引くことができたら、そっちは駄目だと言うことができたら、こんな複雑な感情を抱かずにすんだだろうか。

　本当はこの衣装も太一と二人でやれば余裕で終わるし、別に人手が足りないわけでもない。

　衣装を作るのは好きだし、一人でやってもできるけど、それを理由にして久しぶりに会いたかった。

　元気そうでよかったけど、コイツのせいで……。

「あのさ、一つ言っておくけど」

「な、なんッスか？」

「兄貴の前で間違っても"翡翠"なんて口にするな」

　翡翠は兄貴の足枷。

　あのときからずっと、消えずに残ってしまった呪いだ。

「じゃあ、やっばり……」

「兄貴のことはもういいでしょ。早くこの衣装持っていって、休憩するから」

　アンタも食べるでしょ？と言いながら稽古部屋へと足を進める。

　兄さんは皆で、なんて言ってたけど、俺は全員に分ける気は更々ない。

　テンプレヤンキーに見つかったら確実に消える。

　それに、兄さんの存在は知られるわけにはいかないから。

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