セカンドプロローグ １−�� ページ10
「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切さま」
ふつふつと沸き立つ怒りをそのままに冷ややかな口調で返答した。マルフォイの頬にピンク色がさし、絡みつくような言い方で「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるがね」と続ける。
ハリーは彼が怒ったのか恥じたのか判別がつかなかったが、機嫌を損ねたのはよくわかった。長年の経験から少からず恐怖を感じる。それでも初めての友人を揶揄されて、黙っておくことは出来ない。ハリーの態度がより頑なになったのを感じ取ったのか、マルフォイはさらに攻撃的な声色で畳み掛ける。
「もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道を辿ることになるぞ」
「おい待て」
「君の両親も、何が自分の身のためになるかを知らなかったようだ」
「待てって言ってるだろ」
「ウィーズリー家やハグリッドみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるだろうよ」
ローブの男の子の静止は最早ないものとされている。せせら笑いに、ハリーもロンも立ち上がっていた。ロンが「もういっぺん言ってみろ」と猛々しく叫ぶ。
「へえ、僕達とやるつもりかい？」
「いますぐ出ていかないならね」
ハリーはきっぱりと言ったが、クラッブやゴイルとの体格差には気づいていたので内心は言葉ほど勇敢ではなかった。
それを知ってか知らずか、あくまで横柄に「出ていく気分じゃないな」とハリー達から視線を外した。ゴイルが菓子に手を伸ばす。ロンはすぐさま飛びかかったが、触るか触らないかのうちにゴイルが恐ろしい悲鳴を上げた。鼠のスキャバーズが彼の指に取りつき、その小さい歯をがっぷりと食い込ませている。ゴイルは喚きながら指ごとスキャバーズを振り回した。鈍い音が鳴る。
クラッブとマルフォイは後ずさりして、アンリはやっと窓に叩きつけられた鼠を微妙な顔で眺めていた。ハリーの目には彼の薄い唇が「蚯蚓の尻尾」と呟いたように見えたが、気のせいかもしれない。やがて三人だけが足早に消え去り、コンパートメントには二人分の荒い息遣いだけが残った。
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作者名：砂な | 作成日時：2023年3月25日 23時
