断頭台で待ち合わせ (ページ34)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:2,435 hit

ほつれたリボン２－④ ページ34

翌日、ドラコと顔を合わせたらまるでポッターを見ているかのような目で「リボンは？」と訊かれた。
　もともと低血圧気味なのに天体観測も相まって寝不足を極めていたシャルルは、繊細なドラコおぼっちゃまを上手く取りなせなかった……というかマルフォイの邸──あそこでは言い負かされてぐずるドラコを嫌な顔ひとつせずに慰めてくれる彼の母親のナルシッサ・マルフォイがいるので口喧嘩し放題である──にいる感覚で「聖マンゴにでも行くかい？失くしたんだよ。見ればわかるだろ」とジャブを撃ったので、それきり口を利いていない。
　リボンさえ取り戻せばドラコの態度も少しは軟化するのだろうけれど、ピーブズはあれから全く現れない。シャルルはドラコの他には禄に友達もいないので、人海戦術でリボンを手に入れることが出来ず、ドラコのフォローはナルシッサに任せきりだったので、彼の機嫌を好転させる術を持たないのだった。自業自得である。

　シャルル自身の機嫌も最悪だ。
　同級生と比べ背が高く、耳にはピアスが刺さり、流暢なクイーンズイングリッシュにも拘わらず少々荒っぽい喋り口で、声も意識的に低く保っているシャルルは間違いなく気の強い生徒として認識されていたのだが、ここ数日は主にスリザリンの一部生徒から嘗めた目で見られている。“アンリ”であるシャルルが入学以降目立った行動をしていないことと、他人からすればドラコに見限られたような状態であることも後押ししたのだろう。
　英国は市民(シティズンシップ)教育によって、シャルルの前世の年代ではいじめにおける傍観者を仲裁者にする効果が多少認められている。しかしシャルルの生きる時代は、それが義務教育に導入された二〇〇二年よりも前であり、そもそも魔法界には権利の理念が薄い。
　ホグワーツ魔法魔術学校でもいじめの例は数え切れず、児童書である作中でさえマートル・ワレンやセブルス・スネイプなど、一世代に一人はいじめられっ子がいる。ネビルもそうなりつつあり、彼については他ならぬドラコが加害者だ。
　シャルルはネビルを庇うつもりがあまりない。そのため、シャルルは自分を誰かに助けてもらうつもりもなかった。シャルルの感覚においては、いじめと称するほどに酷いことをされているわけでもないし、加害者は反撃する価値もないその他大勢という認識でしかなかった。

ほつれたリボン　２－⑤→←ほつれたリボン　２－③