ほつれたリボン １−�� ページ26
魔法薬学の授業は地下牢で行われた。肌寒いだけでなく生物を入れた硝子瓶が四方を取り巻いており、生徒の顔色は悪い。
そこへ同じくらい土気色をした顔の男が現れた。スネイプだ。ねっとりした頭髪と蝙蝠のようなマントは境目が怪しいほど黒々としている。妖精の魔法を担当するフリットウィックと同じく出席を取り、ポッターの前まで来て、猫撫で声に変わる。
「ハリー・ポッター。我らが新しい、スターだね」
すぐさまドラコが従者もどき達と冷やかし笑いをした。いきいきしている。シャルルにもちらりと命令らしき視線が送られたが、涼しい顔で受け流した。
「この授業では杖を振ったり馬鹿げた呪文を唱えたりはしない。いいかな？ 魔法薬調合の微妙な科学と芸術的な技を諸君が理解できるとは期待していない。だが一部の、素質のある選ばれた者には伝授してやろう。人の心を操り感覚を惑わせる技を。名声を瓶の中に詰め、栄光を醸造し死にすら蓋をする、そういう技を」
呟きのような低い声だが、生徒達は一言も聞き漏らさなかった。シャルルはそこにマクゴナガルのようなカリスマ性を感じ、無意識に前のめりになって聴き入る。皮肉に満ちた演説が終わると、教室はしんと静まり返っていた。
シャルルには今ばかりは目配せし合うウィーズリー達が能無しに見えた。魔法薬学は教師への期待から楽しみにしていたが、グリフィンドールと合同なのが多少憂鬱なのは否めない。ドラコがスネイプという強力な味方を得てとくいになって彼らを嘲るのが目に見えているからだ。
視線を戻そうとしたとき、またもやウィーズリーと目が合った。彼はあっと声が聞こえそうなほど大口を開けて目を逸らし、その隣でポッターが気まずそうに曖昧な目礼をする。微かに湧き上がった悪感情は、次の瞬間、スネイプの鋭い呼び声で同情に塗り替えられた。
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作者名：砂な | 作成日時：2023年3月25日 23時
