第一章 その6 ページ11
暖炉の抜け穴…まあなんにも知らない人にとっては予想外だっただろうね。
私は知ってたよ？だって昔…私自身もその穴を通ったことがあるから…“ある人物”と共に…
「…失礼、なにやら騒がしいようですが…何かありましたか？」
そんな時、聞きなれない声がした。振り向いてみると、赤い衣服をきて、短いドレッドヘアをした褐色の肌の男がリサリサ様に話しかけていた。
その男の後ろに、もう1人若くてガタイのよく目付きの鋭い男がいる。
リサリサ様は彼を見て目を見開く。
「…あなたはアヴドゥル…お久しぶりね…」
リサリサ様に“アヴドゥル”と呼ばれた男は彼女に向かって頭を下げた。
「ご無沙汰していますリサリサ殿。迷いの森からなにやら騒がしい声が聞こえまして様子を見に来ました。」
「実は…王子が姿を消してしまい、現在捜索中なのです。」
「なんと…それは穏やかではありませんな…迷いの森に…しかもご自分のご生誕の日に行方不明などと…」
アヴドゥル…リサリサ様の知り合いかな…昔の恋人…なわけないか。
そんなことを思いながら、『王子の行方について何か心当たりは？』『いえ…』というような2人の会話を聞いてると、アヴドゥルさんとやらの後ろにいた男と目が合った。
え…この人…
「…ジョセフ…？」
「…！」
そう、雰囲気は違うけど、義兄のジョセフに顔がよく似ていた。
すると、ジョセフ似の男がこちらに歩みよってきた。
「…あんた、ジョセフの知り合いか…」
「え？…はぁ、まあ…」
さっきの呟き、聞こえてたのか…にしても、近くまで見るとますますジョセフそっくり…ジョセフの親戚の人…？
「そうか、エマ・ジョースターってのはあんたのことか…」
「えっ…あの…どうして私の名前を…」
「確か、あんたは王族直属のメイドだったな。」
いや無視かい！！…私の名前とか王族直属とか知ってるって…この人何者なの…？
「…“石仮面”って奴について、何か聞いたことあるか…？」
「石仮面…？」
うーん…ディオ様は刀とかグラスとか珍しい宝を集めてるけど…石仮面なんて聞いたことないなあ…
「申し訳ありませんが…そのような物には心当たりありませんね…」
「本当か？何か隠しちゃいねえな？」
「はい…」
疑り深いなこの人…ジョセフ似の男はまっすぐ私を睨みつけるように見ていたが、少しの間の後、ふう、と息をついた。
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作者名：あんず | 作成日時：2019年12月8日 21時
