闇オークション職員の憂鬱

■　記録25 ページ28

ピウスとアルマ、サエウムはオークションに住み込みで生活しているので食費は給料から抜かれる。その代わり厨房は料理のためなら自由に使えることになっているのだ。ちなみにカントゥスも住み込みである。

厨房担当のサエウムに任せた方が美味い飯が食べれることは確かなので、何かとサンコイチになることの多い三人の中で誰が料理を作るか、となればサエウム一択である。

ピウスも料理が出来ない訳ではないがやはりサエウムよりは劣るし、アルマは良いところの出なのでそもそも料理をしたことがないらしい。カントゥスは接客担当なので、まぁサエウムに任せた方が適作だろう。


「…ということなので〜、明日からよろしくお願いします〜」
「ん、よろしくー」
「よろしくお願いします」

連絡事項のみを伝えて厨房の鍵を取りに向かったサエウム。それを見送って挨拶を交わすカントゥスとアルマ、そしてピウス。

三人はサエウムとは逆方向、昼は一般人が、夜はバイヤーが使用するホールへと歩き出した。





「〜、……〜…」
「それ、どこかで聞いたことあるなぁ…。なんの歌？」

「これですか〜？ 母上がよく聞かせてくれた歌なんですけど。知ってるんですか〜？」


住み込み、寮と言えば聞こえはいいが、空き部屋を貸してもらっているだけで、同じ階とは言え場所はばらばらである。夕飯を済ませサエウムとピウスと別れたアルマは、偶然にも近い部屋であったカントゥスと自室に向かっていた。

なんの緊張感もなく鼻歌を歌い出すカントゥスのそれに、どこか聞き覚えのあったアルマは疑問を口に出す。

「んー、どこで聞いたかは思い出せないんだけど…。歌、好きなんだ」
「好きですよ〜」


その後も少しの雑談をして二人は別れる。

「じゃ、また明日。おやすみ」
「おやすみなさい〜」





「…十年前にここでちょっとした騒ぎになった事件の主犯、何魔法使ってましたっけ〜。……へぇ、毀損魔法ですか。…いえ、ちょっとした興味ですよ〜。……はい、そこら辺は上手くやってるのでご心配なさらず。…了解しました、それではおやすみなさい〜」

バイヤー＝オークションの買い手
ホール＝レストランなどで客席が設けられている場所

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