■ 記録22 ページ25
ピウスはいつも以上に忙しかった。魔法を駆使して怪我をした職員らを治療しなければいけなかったからだ。
猟奇的な考えを持っている癖に、基本的に真面目で、根はそれ程腐っていない。寧ろ無駄な人情や正義感ばかり。そんな
というのも、この世界において治癒魔法を持っている人間は極めて希少だからである。それこそ風邪や気分などの病事は治せないが、肉体的な怪我、損傷は治せるすぐれもの。それも手をかざすだけでいい。その上、それを使う際の魔力量を無意識下に最小限に抑えることができる。
そんな便利な魔法を、裏の世界は見逃したくなかった。
怪我をした人は医務室行きがほとんどだが、手におえないものとなるとピウスのところに運ばれてくる。ピウスに連絡を入れるのはアルマの仕事だ。
「…ふぅ」
一段落したのか息をつくピウス。治療したのはざっと二十数人。いくら放出する魔力量が少ないからと言えど、これだけの人数がいれば疲労は感じる。ピウスは重い体を引きずりながら医務室を出た。
「…派手にやったね」
「んだからお前がやれっつったんだろーが」
所変わってアルマとサエウム。
二人の周囲を除き、辺りは黒焦げであった。火は早々に消しとめられたため火災の心配はないが、エルフの少女は壁に叩きつけられ、頭から血を流していたところを駆け付けた職員によって医務室へと運ばれた。
幸い、地下は、大抵の魔力なら防げる素材でできた天井と壁によって、黒く焦げたとしても穴は空かなかった。
アルマは"爆発"の直前にサエウムの近くへと移動したため、特に怪我は無いようだ。
「…サエウムさん。に、アルマさん」
「なんだい、僕はおまけかい?」
ピウスが疲労を顔に滲ませながら現れ、その二人に近付く。アルマは付け足したかのように自分の名前を出されたことが気に入らなかったのか不服そうな顔をした。
そんなアルマにいつものような口を叩ける程、ピウスの精神は安定していなかった。納得がいかないような表情でうつむいたピウスを、サエウムは真っ直ぐ見据えた。流石にアルマも空気を読んだのか黙りこむ。
「……あそこまでする必要、ありました?」
数秒して、ピウスが発した言葉。その声は、怒っているとも、悲しんでいるとも、とれた。
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あき(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 返信遅くなってしまい誠に申し訳ありません!とっても嬉しいです、ありがとうございます!もうそろそろ更新できそうなので頑張りますね!ピウスさん私も好きですよー。 (2020年9月26日 21時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 沢山のお褒めの言葉、とても嬉しいです、ありがとうございます!これからも面白い作品作りに精進して参りますので、応援の程宜しくお願い致します!あ、私もピウス君好きです! (2020年9月20日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
ぬーん(´`)(プロフ) - 夜分遅くにコメント失礼します…! え、え、凄く面白いです…! 個性的なキャラや、言い回し、圧倒的な文章構成力…!! しっかり作り込まれた一次創作本当に好きです…。文章だけでピウスくん好きになりました(*´`*) (2020年9月20日 23時) (レス) id: 554c742bde (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - サワーさん» さわんぬぁぁぁ!そう言ってくれて嬉しいです!ありがとうございます!これからも頑張るのでよろしくお願い致します! (2020年9月16日 17時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - サワーさん» 二人で一生懸命練り上げたキャラクター達なので、そう言って頂くと本当に嬉しいです!これからも、サワーさんのことを飽きさせない作品作りに努めますので、応援宜しくお願い致します! (2020年9月15日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
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