□ 記録20 ■ ページ23
「ねぇ、ここで何してるのかな?」
失態。
この声は前の風魔法の人間だ。
あの人が折角逃がしてくれたのに、何をやっているんだか。
肩に置かれた手に、力はないが圧が増していく。本能的にまずいと悟った。
走り出そうとしたところで腕を掴まれる。振りほどこうにも解けない。そもそも種族と性別の問題だ。
「ねぇ、君さ。どうしてそんなに必死なの?」
「……え?」
「君がその体で故郷に戻れる可能性はゼロに近い。そこら辺で魔物に襲われるか、餓死するのかがオチだろう。それよりかは不味くても飯が出て、服も与えられるここにいる方がいいと思うんだけどなぁ」
あざとく首を傾げた風魔法。
前のワタシだったらここで諦めていたかもしれない。でも違う。あの人に言われた。
「このままで、ほんとにいいの〜?」
「っ離れて!」
「あ、ちょ…!」
これぞ火事場の莫迦力というものか。思いっきり風魔法を突き飛ばして闇雲に走る。逃げろ。足を動かせ。
「大丈夫〜。僕がここから出して、自由にしてあげるから〜」
そうあの人に言われたから、ワタシは走るんだ。
「自由になったら、君の力で逃げるんだよ〜?」
そうあの人が激励してくれたから、ワタシは逃げるんだ。
「いい〜?またいつか会えるまで頑張ってね〜」
そうあの人が背中を押してくれたから、ワタシは足を動かすんだ!
「ああああああああああっ!」
疲労は既に限界を迎えていた。
まあ、無理もない、ワタシはろくに動いていないのだから。
でも、走る、逃げる、足を動かす。
逃げて、逃げて、逃げて、逃げて逃げて逃げて逃げて逃げる。
そのことしか頭になくて、目の前の景色もスフマートでぼかされていたかのようだった。
嗚呼、ワタシは自由なんだ!
重りも枷もないまま、思い通りに体を動かせるんだ!
あんな奴等を見なくたっていいんだ!
なんて素晴らしいんだろう!
「は、はは__」
思わず笑みを浮かべた矢先。
目と、鼻の先。
「僕の魔法を、もうお忘れかい?」
11人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「合作」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あき(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 返信遅くなってしまい誠に申し訳ありません!とっても嬉しいです、ありがとうございます!もうそろそろ更新できそうなので頑張りますね!ピウスさん私も好きですよー。 (2020年9月26日 21時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 沢山のお褒めの言葉、とても嬉しいです、ありがとうございます!これからも面白い作品作りに精進して参りますので、応援の程宜しくお願い致します!あ、私もピウス君好きです! (2020年9月20日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
ぬーん(´`)(プロフ) - 夜分遅くにコメント失礼します…! え、え、凄く面白いです…! 個性的なキャラや、言い回し、圧倒的な文章構成力…!! しっかり作り込まれた一次創作本当に好きです…。文章だけでピウスくん好きになりました(*´`*) (2020年9月20日 23時) (レス) id: 554c742bde (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - サワーさん» さわんぬぁぁぁ!そう言ってくれて嬉しいです!ありがとうございます!これからも頑張るのでよろしくお願い致します! (2020年9月16日 17時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - サワーさん» 二人で一生懸命練り上げたキャラクター達なので、そう言って頂くと本当に嬉しいです!これからも、サワーさんのことを飽きさせない作品作りに努めますので、応援宜しくお願い致します! (2020年9月15日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ