モブ探しなんてめんどくさい

9 ページ9

嘘つき。

　"何から聞きたい？"って言ってくれたのにね。

　どうしても私には、栗山君があんなことで猫を被るとは思えなくて。

　


　





　
　









　まぁ別に、どうでもいいんだけど。





(どーしよーかな……)

　翌日、モブを探すのにはまず主人公から見つけなくてはいけないと学んだ私は授業中、フラフラと視線をさ迷わせていた。どうしてもモブと主要人物の区別がつかない。

　ならば、だ。
　寧ろ私が主人公になればいい話では？ 主人公が虐められる、というのは多い気がしない。まぁ、私が知らないだけかもしれないのだが。
　主人公補正がついてしまえば少なくとも味方は出来るだろう。

　主人公になるにはどうすればいいか、そんなことを考える。目立てばいいのか、仲間が出来るように目立てばいいのか？ じゃあどう目立てば……。
　派手になればいいというのであれば私にも出来そうではある。栗山も別の意味で目立っているがそうじゃないんだなー。

　とりあえず、派手になるか、と結論付けた。
　授業が終わり向かって行くのは海津(うみづ)さんのところ。海津さんは派手な容姿……言ってしまえばギャルである。陽キャで、いつも彼女の周りには人が集まっている。なるべく目立たないように、と彼女に声をかけた。

｢あのー、海津さん、今ちょっといい？｣

｢おー、Aっちー、どーかしたぁ？｣


　人当たりの良い笑顔でこっちを向いてくれた彼女はあだ名で私を呼ぶ。それ以前に私の名前を認識してくれていたことが嬉しい。多分、彼女もモブではないだろう。

｢えっとー、そのメイク、どう、やってる、の……？｣

　彼女のメイクはすごいものだ。髪を茶色に染め、ノーズシャドウとアイメイクも濃い。ギャルの中のギャルだと勝手に思っている。
　彼女の取り巻きからの視線が集まってきてだんだんと声が小さくなる。それでも彼女は笑顔のまんまで。いや、当たり前か、なんて。寧ろいっそう笑みが深まったような……？

｢おお、おお、ハルっちー興味あるー?! いーよいーよぉ、教えたげる！ っと、ごめんけど今時間ないんでー、……昼休みね！｣


　お昼休みに彼女に教えてもらう、という約束を取り付けて別れた。早く早く、なんて思いながら軽い足取りで自分の席に戻った。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している


←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す