彼の視点 ページ5
タカシと合流してほっとしたのも束の間。
てっきり待ち合わせが遊園地前ということで遊園地に行くつもりなんだと思ってたのに、タカシは私の手を引いて真逆の方向へと歩き出す。
｢えっ？えっ？？タカシ？逆じゃない？あれ？｣
7｢ええねん、こっちで。｣
少しだけいつもと雰囲気の違う声。
なんだろ、違和感。
｢タカシ？｣
呼びかけには口を閉ざしてそのまま歩いてく。
少しだけ、握られた腕は痛い。
私はそんなタカシを止めるために足を動かすのをやめ、むしろ進行方向とは逆に体重をかけた。
ぐいんっと引っ張られるタカシの腕。
7｢は？！え？！｣
何事か、と驚いたように私を映す瞳。
｢やっとこっちみた。｣
大勢が行き交う中で、立ち止まる私たち。
7｢疲れたん？歩きたなかった？｣
その言葉には私は首をふる。
｢タカシ、言いたいことあるでしょ？｣
じっと見つめると、ようやく私たちの視線が合う。
7｢べ、別にないよ｣
すっとそらされた視線は何も無くないと語ってる。
｢遅刻、怒ってるでしょ？｣
再び視線を合わせるように私はタカシの両頬を自分の手で覆い、こっちを向かせて。
｢文句があるなら溜め込まずに言って。｣
7｢そりゃ、嫌やって思うやん。俺やってスズとめいっぱい遊ぶつもりやってんもん。｣
｢じゃあ遊ぼうよ？｣
7｢でもスズ、走ってきたやんか。疲れてるのに全力で遊園地とか辛いやろ？｣
｢何言ってるの？私の体力なめないでよ。｣
気を使ってくれる優しき末っ子。
私はついつい笑ってしまって。
強気にそう答えると、すねたような顔がきょとんとした。
7｢ほんまに？｣
｢タカシの優しさはすごーく有難いけどさ。これでも今まで芸能人やってて嫌って言うほど鍛えられてるし、超特急に加入してからそれこそ血のにじむような努力してきてみんなに負けないくらいの体力を身につけたつもりなんだけど？タカシには私がそんなか弱い女の子に見えてるの？｣
7｢……あたりまえやん。｣
すっと今度はたかしの手が私の頬を覆う。
7｢どんなに頑張ったって、俺にはスズはか弱い女の子やねんで？｣
｢私はタカシが思ってるより強いよ？｣
7｢そんなん、わかってんねんって。強いんは折り紙付きやろ？でも……2人の時くらい普通の女の子扱いしたってええやん。｣
だんだんと論点がズレてる気がする。
それでも痛いほど気を使ってくれてることだけは分かってた。
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作者名：Orin | 作成日時：2019年1月20日 3時
