Snow Dream 5th (ページ16)

今日:6 hit、昨日:5 hit、合計:148,311 hit

④ ページ16

Side Ryota.M

そうして、彼女が乗車している最中たわいない話をしていた。

その会話を楽しんでいるうちにどうやら家の前に到着したようだ。

宮「そのまま待ってて。」

Aへそう伝えると、俺は鍵と財布を持って外へ出る。

キョロキョロしていると、一台のタクシーを見つけて。

宮「迎えに来たよ」

電話口にささやきながら窓をノックすると、Aがこっちを見て早々に会計をしようとしだした。

ドアを開け、

宮「これでお願いします。」

と俺が横から会計を済ませる。

「ちょっとだて様？」

宮「俺のわがままで呼んだんだから当然でしょ。」

そう言って笑うと

「ちゃんと私が払う！」

といいつつAはしかめっ面をした。

宮「却下。とりあえずうちに入ろ。」

戸惑う運転手さんにぺこりと会釈をし、Aの手を引いてオートロックのエントランスを抜けて自室へと戻る。

「ねぇ、だて様っ」

リビングまで来たところでAが俺の手からすり抜ける。

宮「会計のことだったら受け取らないよ。」

「でも今回は私が迷惑かけてるんだし、お礼にご飯にいくこととかまで考えてたのに会計してもらうとか…」

宮「俺がしたいことをしてるだけだから気にしないでいいのに。」

「気にするよ」

宮「どうすれば納得してくれるの？」

「…私、だて様にもらってばっかりだよ？いつものお礼さえできてないのに…何でお返ししたらいいの？」

困り顔で顔を伏せてしまうA。

宮「そうだね…じゃあ、これから俺のことだて様じゃなくて涼太って呼んでよ。」

「いやそんなことじゃお礼のかけらにもならないし」

宮「俺にとっては最大級のお礼だと思うんだけど。だめなの？」

「だめっていうか…」

宮「前からずっと思ってたんだよね。翔太のことは翔太くんとか呼ぶのに俺は一貫してだて様だし。」

「いやだったの？」

宮「嫌とかじゃないよ。でも、Aには名前で呼ばれたい」

ずっと思ってた。

いつか名前で呼んでほしいって。

何をもらうでもなく、ただその声で俺の名を呼んでほしい。

他の誰かを呼ぶその声に、嫉妬してた。

少しでも近づきたくてもやもやしてた。

だから…

「りょ、た？くん。」

宮「君付けもいらないのに」

「りょーた。」

宮「うん。」

「ほんとにこれだけでいいの？」

宮「いいの。」

「…わかった。」

正直まだ納得行っていないんだろうなって思うような顔してるけど。

それでもそれを飲み込んで彼女が頷いた。