薬屋と妓楼の少女

十七話 毒見 ページ18

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実は玉葉妃の懐妊がわかった頃、


二回ほど毒を盛られている事があったらしい。


毒見役の一人は軽いもので済んだが、

もう一人は神経をやられて手足が動かないそうだ。


今まで恐る恐る毒見役をしていた侍女たちは、さぞ猫小姐に感謝している事だろう。


猫小姐は盛られた皿を見て、眉をひそめた。


『(陶器製の皿？)』


毒を恐れているのなら銀が普通だろうに。


猫小姐はなますを箸でつまみ、じっくりと見る。


匂いを嗅ぐと、ゆっくりと舌の上に乗せた。


痺れがないのかを確認して、嚥下する。


『(猫小姐に毒って効かないのかな？)』


即効性の毒ならともかく、遅効性の毒はおそらく猫小姐に毒見頼んでも意味が無いだろう。


昔から実験と称し、少しづつ毒を慣らしてきた。


そんな猫小姐には、この世にある大半の毒は効かなくなっていると思う。


『(実際薬屋の仕事には意味ないんだけどね...)』


猫小姐の知的欲求は度を越している。


西方では、人には理解できないことをする科学者の事をこう呼ぶらしい。


【(狂科学者(マッドサイエンティスト))】


薬師の技術を叩き込んでくれたおやじさんですら、私と共に呆れ返っていたほどだった。


「それらしい毒はありません」


身体の変化も無く、


猫小姐の知識の中に当てはまる毒は無かった。


それを確認すると、ようやく玉葉妃は箸を取り、食事を始めた___冷たいだろうに。


次は公主の離乳食の番だった。


「だう、だう」


『もう少しお待ちくださいね〜』


「(Aに任せて大丈夫だろうか...)」


密かに猫小姐が私の事を心配していたなど、公主を抱いている私は知る由もなかった。


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