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十六話 仕事 ページ17

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薬膳をふんだんに使った宮廷料理が運ばれる。


玉葉妃の侍女頭である紅娘(ホンニャン)が菜を一つずつ小皿に盛る。


それを椅子に座る猫小姐の前に置いた。


すまなそうに玉葉妃が猫小姐を見てるが、止まる様子は見受けられない。


残り三人の侍女は、哀れな目で猫小姐を見ていた。


「キャ、キャ」


『よーしよし。もうちょっとでご飯ですよ〜』


私は今か今かと食事を待つ鈴麗公主を抱きかかえて、心地よい調子で腕を揺らした。


場所は、玉葉妃の部屋である。


上品な調度に囲まれたその場に、毎度妃の為につすられた食事が運ばれてくる。


これは他所で作られた食事だ。


この部屋に運ばれるまでに何人かの手が入る。


当然、その途中で毒を入れられる可能性も考えなくてはならない。


そこで必要なのが毒味役というものだ。


東宮の事で皆、神経質になっている。


公主が病になったのも毒が紛れ込んでいたのではという噂が、証拠にも無く回っていたそうだ。


『(毒の元を知らない人は、毒を恐れてるよね)』


そこへ毒味役専門に下女が送られてきたのなら、


使い捨ての駒として見てもおかしく無いだろう。


猫小姐は玉葉妃の食事だけで無く、公主の離乳食、皇帝訪問の折の滋養料理の毒味も任された。


因みに毒味も出来ない私の仕事といえば、


「時間がある時でいいの。この子の世話をして」


『...私が公主の御世話、ですか?』


「姐が毒味で、貴方は何もする事が無いでしょ。貴方にしか頼めないわ。勘だけど、よろしくね」


「面白い事」への嗅覚が異常に鋭い玉葉妃。


その勘、なるもので私は公主の御世話係に任命された。嫌ではない、寧ろ嬉しい。


「あぅ〜...あうあう」


『(可愛い...)』


薔薇色に頰に翡翠の瞳で見つめられると、


どうも母性というものが目覚めるらしい。


『(懐かしい。白鈴小姐みたいだな)』


少しだけ、少しだけ花街が恋しくなった。



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十七話 毒見→←十五話 部屋付き



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うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (12月14日 1時) (レス) @page34 id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - オチは出来たら愛されエンドか全員のオチが見たいです!更新楽しみにしてます!頑張ってください! (10月24日 17時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
カケオレ - 続き待ってます!更新頑張ってください! (2022年7月3日 18時) (レス) @page34 id: 661d0ebc5d (このIDを非表示/違反報告)
akane0731akane(プロフ) - 面白です!更新待ってます! (2020年4月14日 22時) (レス) id: 4d9b400674 (このIDを非表示/違反報告)
水無月胡桃(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!!励みになります! (2020年1月30日 16時) (レス) id: 1710749122 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水霧 | 作成日時:2019年11月30日 17時

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