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取り敢えず、私がまふくんの家で唯一と言っていい程、足を踏み入れたことのある場所。
リビングに繋がるドアを探して、恐る恐る隙間を潜るように中に入った。
けど。
リビングに入って、きょろきょろ周りを見渡しても肝心の家主の姿が見つからなくて。
もしかしてもういないのかな、なんて考えが頭に過ぎりつつも、名前を呼び掛けみる。
『______まふくん?』
「あ、Aちゃん、起きた...?」
キッチンがある方から、ひょこっと顔を出したまふくんに、
『うん、さっき.......』と返事をする。
そっか、と呟くまふくんの格好を見て、気付いた。
『あ、もしかしてまふくんこの服、着せてくれた...?』
「うん。______ごめん、風邪引いちゃうかと思って」
迷惑だった?と聞くまふくんに、ぶんぶんと首を横に振った直後。急いでお礼の言葉を口にした。
身体を冷やさないように、と気遣ってくれるところが、まふくんらしいと思う。その優しさが心に染みて。
ふと、いつかの雨の日の出来事が頭の中を掠めた。
「_____Aちゃん、水飲む?」
『あ、うん。欲しいです.....』
不意に話しかけられ、ハッと我に返る。
ちょうど喉が渇いていたので、水を貰えるのは有り難かった。
お言葉に甘えて、差し出されたグラスを受け取った。
水を口に含めば、少し冷たい水がすーーっと体に染み渡って、渇いていた喉が潤っていく。そして、ごく、と飲み干せば、ふとこちらを見つめられている気がして。
どうかした?と首を傾げて、顔を見上げたら。
「身体、大丈夫.....?」
まふくんが心配そうに見つめていて。
何故か、分からないけど。
そんな表情のまふくんを見て、きゅっと、胸が締め付けられた。
それに疑問を持ちながらも一旦頭の隅に置いて、口元近くまで持っていたコップを少しだけ下ろす。
『大丈夫だよ』
「そっか」
若干下半身に痛みはあるものの、時間が経てばそんなに大したことじゃない。気にしないで、という意味も込めて頷いた。
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空梅雨(プロフ) - 肴さん» わーー!!名前のミスすみません!!ずっと気付いてなかったのでほんとに助かりました...!!それと更新停止ほんとにすみません、、最近になってようやく続きを書いてるところです、、(最後になりましたが)お話読んで下さってありがとうございます...!! (2023年3月1日 13時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
肴 - めちゃくちゃ面白いです……。大好きです。途中2話ほど「叶恋」さんになっていた所がありましたので一応……。一気読みして最後え!更新停止!?とめちゃくちゃ驚きました。更新ゆっくりと楽しみにしています、 (2023年3月1日 5時) (レス) @page50 id: d8a709d348 (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - LiLiKaさん» タイトルも含めお話自体がなかなか共感しにくい内容かなあ、とたまーに後悔したりしなかったりなのですがそう言って頂けてすごく嬉しいです....!!ありがとうございます🙏🏻 ̖́-励みになります....!! (2023年1月13日 23時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
LiLiKa(プロフ) - P活系に抵抗があって今までどの作品も読んでなかったんですけど、一気読みしちゃいました!作品もすごく魅力的なんですけど、私みたいなP活女子に抵抗あっても読んでるうちに共感したりとかあって、これからの見方も変わりそうです! (2023年1月11日 12時) (レス) id: 0d7a09bcbc (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - 千々さん» わ〜!ここまで一気読みして下さってありがとうございます…!!私の拙い文章で感情移入できました、なんて身に余るお言葉です🤲🏻´-更新頑張れそうです、ほんとにありがとうございます! (2023年1月2日 22時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空梅雨 | 作成日時:2022年6月20日 9時