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すると。
まふくんの指が、頬を伝う私の涙を拭った。
へ、と思わず顔を上げれば。ふわり、と彼の匂いが私の鼻を擽る。そして彼の腕が、私の背中に回されたのが分かった。
.........................私、まふくんに今。抱き締められてる?
そう自覚してから、ふと一瞬我に帰れば。
時間差で今のこの状況を理解して。ぼっと、顔が熱くなる。
『ま、まふくん....?』
_______ゴホン、
まふくんの名前を、呼び掛けた時だった。咳払いが聞こえて。
視線を彷徨わせれば。
少し上の階段から、私たちを2人の男性が見下ろしていた。
その姿を目に映した瞬間、回してくれた腕を振り解くみたいに、パッと。私は反射的にまふくんから離れた。
「______え、そらるさんにあまちゃん?」
どこか、気の抜けた様なまふくんの声。
あまちゃん、は天月さんのあだ名.....だったはず。
「まふまふ、お前イチャつくなら部屋に入ってからしろよ....。
一応ここマンション内だぞ」
それから少し呆れた口調の、そらるさん___と天月さんの視線は、まふくんから私に向いて。
「あーーAさん?だよね」
「あ、はいっ」
不意に名前を呼ばれて、どきりと心臓が跳ねる。なにを言われるのだろうか、と少し身構えた。そらるさんが口を開く。
「えっと、色々勘違いしてごめん」
追い詰めちゃったでしょ、と言って謝るそらるさんに、天月さんは。先程の冷酷な印象とは、打って変わっていた。
『あ、いえ、全然!大丈夫です』
『こちらこそすみません、いきなり逃げてしまって』
一応悪質なリスナーじゃない.......ストーカーとかではないって証明されたことに、ほっと胸を撫で下ろす。
誤解が解けた様で、2対1の状態で頭を下げ続けていれば。
「取り敢えず2人とも、もう帰ってくれません?」
気の所為かもしれないけど、
少し苛ついた様に冷たく言い放ったのはまふくんだった。
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空梅雨(プロフ) - 肴さん» わーー!!名前のミスすみません!!ずっと気付いてなかったのでほんとに助かりました...!!それと更新停止ほんとにすみません、、最近になってようやく続きを書いてるところです、、(最後になりましたが)お話読んで下さってありがとうございます...!! (2023年3月1日 13時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
肴 - めちゃくちゃ面白いです……。大好きです。途中2話ほど「叶恋」さんになっていた所がありましたので一応……。一気読みして最後え!更新停止!?とめちゃくちゃ驚きました。更新ゆっくりと楽しみにしています、 (2023年3月1日 5時) (レス) @page50 id: d8a709d348 (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - LiLiKaさん» タイトルも含めお話自体がなかなか共感しにくい内容かなあ、とたまーに後悔したりしなかったりなのですがそう言って頂けてすごく嬉しいです....!!ありがとうございます🙏🏻 ̖́-励みになります....!! (2023年1月13日 23時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
LiLiKa(プロフ) - P活系に抵抗があって今までどの作品も読んでなかったんですけど、一気読みしちゃいました!作品もすごく魅力的なんですけど、私みたいなP活女子に抵抗あっても読んでるうちに共感したりとかあって、これからの見方も変わりそうです! (2023年1月11日 12時) (レス) id: 0d7a09bcbc (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - 千々さん» わ〜!ここまで一気読みして下さってありがとうございます…!!私の拙い文章で感情移入できました、なんて身に余るお言葉です🤲🏻´-更新頑張れそうです、ほんとにありがとうございます! (2023年1月2日 22時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空梅雨 | 作成日時:2022年6月20日 9時