パパ活

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いらっしゃい、と掛けられた言葉に。
私もお邪魔します、と答えて、彼の家の中に足を踏み入れた。
そして廊下を真っ直ぐ歩いた先の、リビングに通してもらう。






「好きなところに座って」






そう優しく、声を掛けてくれる。

寝室へと真っ先に向かう人が大半なのに、私はまふくんが住むこの部屋の中で、リビングにしか入ったことがなかった。




そんな皮肉を心の他所にソファの隅っこに座ると、まふくんが美味しそうなお菓子や飲み物を出してくれる。

手伝うよ、と声を掛けて立ち上がろうとしても、大丈夫、と返されるのがいつものパターンだ。




そして彼は私の好きなダージリンティーと、お菓子を机の上に置いて、私の横に座った。













私とまふくんの関係は、利害一致で成り立ってる。




自分よりも、年齢がひと回り以上違う男性と身体だけの関係になって。その対価として金銭的な援助を貰う。

所謂パパ活を始めてちょっとの時、まふくんに出会った。


でもまふくんとは、他のおっさんとは違って、一度も身体の関係になったことがない。






ただ、一緒の時間を過ごすだけ。


まふくんの家に招かれて、一緒にお菓子を食べながら、彼の話を沢山聞いて。たまに私の話も聞いてもらって。

同じ時間を重ねて、共有する。
そして、その対価としてまふくんからお金をもらう。


それだけの関係。
まあそれでも、世間ではパパ活と呼ばれる関係性だ。






だから、私は何も知らない。

まふくんのお仕事も、趣味も、恋愛事情も。知っているのは、彼の連絡先と住所と、猫を飼っていることぐらい。



まふくんも私のことは、甘いものや動物が好きなことぐらいしか知らないと思う。住所だって教えてないから。



もちろん、まふくん以外の男性とパパ活をしてること、身体の関係があることだってまふくんは知らないはずだ。

＿＿＿＿＿＿お互い不都合なことは触れないし、隠してる。







「Aちゃん、何食べる？」


そう聞くまふくんに、私は笑顔で答えた。






この関係で、私は充分。





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