砂時計と人生最後の恋。【そらる】

ないんてぃん。 ページ19

「夢主さん！！！返事してください！！」




看護師さんはどう足掻いても死ぬって分かってるくせに彼女にそう呼びかける。




泣かなかった。俺は、泣かなかった。




いつものように眠った時の顔をした彼女の身体は、どんどん生きる事をやめていく。




全く、最期の最期までどんなに俺を揺さぶれば気が済むんだ。




寸前に「おやすみ。好きだよ、彼方さん」なんて言っちゃってさ。




きみが喜んでくれるだなんて妄想を膨らませながらまだ温かい彼女の頭を撫でる。



「…」




最期に、彼女が書いていた歌詞をみてみるか。




紙を開いて、彼女の字をゆっくり見ていく事にした。





悪戯な世界に、私が生きた証拠を残しましょう。





そんな言葉から始まった彼女のダイイングメッセージは、




「う…」




この世界に恨みなんてなくて。




「うあぁ…」




真っ直ぐ前を見てて。




「あ…うあぁああ…！」




真っ直ぐ前を見てて。




「あぁああああああぁぁああああ！！！」




真っ直ぐ俺を見てくれた。




「うあぁああああああ！！！ああああああああああああああ！！ああああああああああ！！！うああああああああああああああああああああああああああ！！！」




すごくカッコ悪い。




けど、俺は泣き叫んだ。




俺の世界は、




ボロボロに壊れて、狂った。

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