11話。 ページ12
「伊東先生ーいらっしゃいますかー」
「…はーい!ここにいるよー、どうしたのAさん…って、天宮くん!?」
やっぱり先生も驚いている。ふふふ、なんだか私も誇らしい。
照れ臭そうに頭を下げた天宮くんに、しばらく伊東先生がフリーズ。
やがて我に返ると、口角を限界まで上げた最大級の笑顔を浮かべた。
「よく頑張ったね!!すごいすごい!!もしかしてAさんが連れて来てくれたの?」
「えへへ、私も正直来てくれるなんて思ってなかったけどね。」
子供のようにはしゃぐ先生に天宮くんも照れた表情のまま頷いた。
「…僕、ずっと学校に来たかったんですけど一人じゃ勇気が出なくて…それで、Aさんが自分の事も喋ってくれたので、信じてみようかなって。」
毎日制服着て、ちゃんと鞄も背負ってたんだ。多分、それでも行けない自分に嫌気がさしていたのだろう。
初めて喋って2日で、少し、いやかなり心を開いてくれたのか。
…天宮くんはきっと、底抜けに心優しい人なんだろうな。
「もちろんこのまま教室に、なんて無理だと思うから…別室なら明日も登校できたりする?」
「…頑張ってみます!」
天宮くんは元気よく答えた。
少しずつ、少しずつだけど彼の事がわかってきた気がする。
ただひたすらに、前を向こうとする強い人。
「じゃあ行こっ!またね先生!」
「うん!Aさん、天宮くんをよろしくね」
「任せなさいっ!」
そんな言葉を交わして私達は職員室を出る。
ニコニコと足が浮きそうなほど上機嫌のまま廊下を歩いていると、聞き慣れたメロディが死の宣告のように流れた。
「やばっ!」
授業が終わった生徒がざわざわと騒ぎながら廊下に出てくる、命の危機がすぐそこに迫っている!
つるつるの廊下に苦戦しながらも慌てて0組に駆け込めば、二人の荒い息だけが教室に響き渡った。
「…くはっ」
直後、どちらからか笑い声が漏れたのだった。
172人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るぅ(プロフ) - 小説見ても、最後のあとがき見ても泣きました!最高でした!これからも頑張ってください!全力で応援してます!! (2018年9月22日 22時) (レス) id: 44848c94a9 (このIDを非表示/違反報告)
しあ。(プロフ) - うはー、セイシュンすぎるー( ・ω・) (2018年7月20日 10時) (レス) id: 3344a8c17f (このIDを非表示/違反報告)
ゆずもち - なので周りの人に悩みが伝えられて『不登校』などでも自分で考えて選択できている人は私なんかより強い人だと思います。(実はリスカとかもしてしまっていて)こんなものをネットでしか出せない、しかもまとまりの無い自分語りでした。長文すいません (2018年7月11日 2時) (レス) id: 59a56879c2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずもち - 私は小説とかで出てくる『何でも言える友達』という存在が羨ましいです仲のいい子はいるけどどこか信用できなくていつも八方美人してしまって学校から帰って暗くなってしまいますでも不登校になったりとか特別な教室での通学するほどの勇気すら持てません (2018年7月11日 1時) (レス) id: 59a56879c2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずもち - 今回も素敵なお話でしたなんだか温かい気持ちになりました (2018年7月11日 1時) (レス) id: 59a56879c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ