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願いを捧げる ページ19

師匠の屋敷が見えてきた。
「師匠!」
「ん?どぬく、どうかしたのか?」
「あー、妖狐くんだ!」
そこには、先程まで〈死の森〉にいたサンザシさんがいた。
「師匠!えぇと…あれ?なんだっけ?」
叫んだはいいが、何を話せばいいのかわからない。
どぬくは小声で九尾の狐に助けを求める。

「ね、何を話せばいいの?」
「知らないよ、そんなの…」
するとえとは、不思議そうに首を傾げる。

「…お前、なに一人でコソコソ話してるわけ?」

「え…?」
九尾の狐は、少し寂しそうな顔でえとを見つめる。
(師匠にも…存在が認識されなくなった…)

つまり、今九尾の狐が"視えて"いるのは、どぬくだけということになる。

「…もうすぐ消えるみたい」
九尾の狐の言葉に、どぬくは一瞬だけ呼吸を忘れた。

「だからさ、君にいくつかお願いしときたいことがある」
返事を待つわけでもなく、九尾の狐は話し出す。

「まず1つ。目の前にいるサンザシさんは偽物だ。だから、その偽物から師匠を守って。
 2つ。君はこの後、死神様に会うことになるだろう。その時に師匠を死神様の所に預けるんだ。
 そして最後に、この結末の元凶は―――」
そこまでしか、聞こえなかった。
(未来の俺が、俺にこの先の事を教えたから、存在が消えちゃったのかな)
それでも俺は、その願いを聞き届けなければいけない。
「…どぬく?」
「師匠、ちょっとこっちに来て」
「?」
師匠は不思議そうに首を傾げてはいるものの
こちらに歩いてくる。
「シヴァさんは?」
「自宅で療養中」
まあ、九尾の狐にふっとばされた時、体から鳴ってはいけない音がしていたから、それが妥当かもしれない。
「サンザシさん」
「どうしたの?妖狐くん」

未来の自分だって、師匠を、大切な人を、守りに来た。
何度時間が戻ろうと、諦めずに師匠を殺しに来た。
未来で師匠を守るために。
それに何の意味があるかは分からない。
でも、頼まれてしまったから。
その願いを、消えてしまった存在を、無下にはできない。

地面を力強く踏みしめて、あの時を思い出す。
村でいじめられていたあの時を。人を憎み、神を恨み、自分を否定したあの時を。
全てが怖く視え始めたあの時を、思い出す。
たとえ記憶が消えてしまったとしても、憤怒の炎はほんの少しの恨みの灰に燃え移り、赤く輝く。
刀は憤怒の炎で赤く染まり、赤と青のオッドアイが、炎の光を反射して明るく輝く。

「スキル…〈睚眥之怨(がいさいのうらみ)
地が割れ、刀がサンザシを切り裂く。

「…チッ」
舌打ちをするような音が聞こえて、サンザシは灰となり、消え去った。

あとがき(いや、一応終わってませんけどね?)→←舌を噛むから



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青空 冬(プロフ) - みいなさん» コメントありがとうございます!やっと20話行きましたー!応援ありがとうございます!神ってる…✨めっちゃ嬉しいです!いつもありがとうございます! (2月10日 22時) (レス) id: dfbd65d4da (このIDを非表示/違反報告)
みいな - わあ〜!!20話おめでとうございます!めちゃくちゃ楽しみです!毎回切る所が神がかってるんですよ、、。(内容も神、ハイ。)6章も見ます!!頑張ってください!!! (2月10日 22時) (レス) @page20 id: 0fded84a07 (このIDを非表示/違反報告)
青空 冬(プロフ) - みいなさん» コメントありがとうございます!そうなんです…でも、のあさんも結構出す予定です!引き続き見てくれると嬉しいです! (1月25日 20時) (レス) id: dfbd65d4da (このIDを非表示/違反報告)
みいな - すごい展開になってきましたね……!!のあさん会なのかな?っと思っていたら急な展開に!想像力半端ないですね、、(いい意味で)とっっっっっっても面白いです!これからも応援しています!! (1月25日 15時) (レス) id: 0fded84a07 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青空 冬 | 作者ホームページ:sakurasaku  
作成日時:2024年1月15日 22時

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