2話 ページ4
銀「んじゃ、ついてきな。」
と言って後ろの建物を指差した。
あ「はい。あの、その前に…ここがどこだか教えてもらえませんか?」
銀「ここァ歌舞伎町だ。」
あ「歌舞伎町…。」
私のいた世界にも歌舞伎町はあった。けれど、私のいたそれとは大分雰囲気が違っていた。道行く人が皆着物を羽織っているのも違う。
あ「歌舞伎町ということは、ここは東京ですか?」
銀「んあ?いーや、ここは江戸だけど?」
あ「江戸…?」
銀「まあ、俺もあんたも分かんねーことばっかだしよ、とりあえずついてきな。茶ァでもしばきながら状況整理しようや。」
あ「はい…」
気怠そうに大きな欠伸をして、これまた気怠そうに歩き出した彼の後ろをついていく。
銀「銀さんが帰ったぞー」
引き戸を開けて彼がそう言うと、奥からバタバタと足音が聞こえてきた。
?「帰ったぞーじゃねェアルゥゥゥ!!」
銀「ぎゃああああっ!!」
?「仕事もしないでどこほっつき歩いてたアルか!?」
それは一瞬の出来事だった。可愛らしい女の子の声が聞こえたと思えば、目の前にいた彼は階段下まで吹っ飛んでいった。それをすかさず追って彼に馬乗りになった女の子。
?「お前この2、3日どこ行ってたアルか!?」
銀「いや……ちょっと、パチンコ行ったらこう…たまたま当たってよ…それでその、ちょっと…豪遊……的な?」
?「お前その元手が何だったか言ってみるアル。」
銀「いや……えーっと…」
?「今月の食費だろォォがっ!!お前がその金で豪遊してる間私は腹ペコで死にそうだったアル!!」
そんな2人のやりとりをぼんやりと見つめていると、家からまた誰かが出てきた。
?「神楽ちゃん、それぐらいでやめときなよ!」
神「うるっっさいアル!!新八風情がこの歌舞伎町の女王に口答えするなんて100年早いアル!!このダメガネがっ!!」
新「あーもう怒った!!勝手しなよ!!」
これ、私が止めた方がいいんだろうか。でも、こうした喧騒も私には物珍しくて。正体がバレていない今が1番心穏やかに過ごせる時間なのだ。生きている人間をマジマジと見たのも初めて。面白いもんだな、なんて笑みをこぼす。
新「あの……大丈夫、ですか?」
私にやっと気付いたらしいメガネの男の子が遠慮がちに声をかけてきた。でも大丈夫って何のこと?
新「泣いてますよ…?」
そう言われて初めて、自分の頰が濡れていることに気付いた。
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作者名:葉生姜 | 作成日時:2017年10月17日 21時