限界を越えて行け ページ8
「ぅ…う…っ…、おぇ」
嗚咽する私の側にはショッピさん。彼もまたその光景に釘付けであった。吐物の臭いが充満し、さらなる吐き気が私を襲う。胃の中の物を全て出し切った時、やっと周囲の異変に気づくことができた。先程までガラス越しにいた施設の者が誰一人いない。機械は止まっており、被験者達に束の間の休息が与えられていた。
「……ショッピ、さん…？」
「はっ…はぁ…」
さらに隣にいたショッピさんの顔色が真っ青で身体中から汗が噴き出してしまっていた。呼吸も徐々に荒くなっている。今にも倒れそうな彼の背中に触れると小さく震えていることに気づく。
「むらさき、紫や…あいつらも…俺も…」
急にしゃがみこんだショッピさんは体をガタガタと震わせたまま何かを呟き始める。何のことだ、と声をかけたいがウィーンと扉の開く音が聞こえそれどころではなくなってしまった。
「あらお嬢さん。遠いところからわざわざこの施設に来て下さるなんて…言ってくれれば案内しましたのに」
「…人に銃を向けながら案内なんて冗談言わないでくださいよ」
「うふふ。生意気なお嬢さんね。私のタイプよ。そっちの小鹿のように震えてる彼も可愛いわね」
扉の向こうから見えた人物。それは白衣を着た大柄の女であった。手にはマシンガンを持ちこちらに標準を当てている。
「はぁ…今からあなた達が蜂の巣になるのは気の毒だけど…きっと綺麗な赤色を見せてくれるんでしょう？」
「なわけ、ないでしょ」
「ふふ…震えちゃって…」
未だしゃがみこんだままのショッピさんを庇うように立つ。女はニタニタと鳥肌の立つ笑みを浮かべたままだ。どうする？どうすればいい？私の頭では答えは出ない。ショッピさんの具合も良くないこの状況。どう考えたってピンチだ。
無意識に隊服を握りしめる。するとポケットの部分に何か丸いものが入っていることに気づいた。そっとそれを取り出して女に気づかれないように視線を向けた。今はこれに頼るほかない。それを目の前に強く叩きつければ辺りは煙に包まれる。
「あらあら、煙玉なんて子供騙しじゃないの」
女の声と同時に銃声が聞こえてくる。マシンガンではないのは舐められている証拠か、でも今は助かる。動けないショッピさんを鍛冶屋の馬鹿力で引っ張りその場から逃げる。
「鬼ごっこ、しましょうね。まずは私が鬼よ」
ケタケタと笑う声。そして私の肩に弾が当たる。
「…っ！」
「声を我慢して偉いわねえ。」
まずは一人。と声がした。
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鳩山(プロフ) - えみさん» コメントありがとうございます。懸命に生きる2人と彼らの話を素敵と言っていただき本当に光栄です…！最後までご愛読ありがとうございました！ (2021年2月20日 16時) (
レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
えみ - rbr推しですがshaちゃんとくっついて欲しいと思ってしまう程の作者様の文才に引き込まれました…！とても素敵な話でした！ (2021年2月19日 17時) (レス) id: 1597543406 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ブンブンさん» ブンブンさん！以前もコメントして下さいましたよね？本当ありがとうございます…！良かったら番外編でもよろしくお願いします…！最高に嬉しい言葉を本当にありがとうございました！ (2019年11月11日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 完結おめでとうございます！貴方の作品に出会えて本当に良かったです！ (2019年11月10日 23時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - kogarashi343gooさん» コメントありがとうございます！本当に嬉しいお言葉ばかりで私からも感謝させてください！すごく励みになります…！今後は番外編然り、別作品然り、更新頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します！ (2019年11月10日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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