許されない罪 ページ33
「何で、チーノがここに…?」
「あかんでぇ。よう考えたら分かるやろ?」
ニタニタと笑って近づくチーノ。私は床に這いつくばったまま彼から距離をとる。チーノとは幹部の中でも仲が良い方だと思っていた。
しかし…目の前にいる男は、誰だ。こんな表情をする男なんて知らない。
「ったく、立ったまま気絶しとるやん。」
チーノは赤髪の男の顔を見て溜息を吐く。そして目線を私に戻した。
「オプロイテがここまでこいつを追い詰めたんも、Aの能力やな?」
「………」
「無言は肯定やなぁ」
「オプロイテさんに何をしたの…」
「何って麻酔弾撃ったんだけやで。死にはしてないから安心してや。エミさんも、オスマンさんも生きとる。今回は上から殺す指示出てないしな」
チーノの言葉を聞いて段々と理解する。この男は最初から、私たちの敵であったと。
「ま、さか…あの日、トンつく隊を倒したのも、」
「ふーん…ちゃんと考えられるやん。……せやでAが誘拐される原因作ったのも俺や。」
ならば、と声が震える。
「…シャオロンも、チーノが…」
「せーかい」
語尾にハートがついてもおかしくない言い方をしたチーノは私のすぐ側きてしゃがみ込む。グッと私の髪の毛を引っ張り無理矢理立たせた。私は、あまりの怒りに息が荒くなる。
「そんな睨みつけんと。可愛い顔が台無しやで?」
チーノが拳銃を持った手で私の頰を撫でる。
「こんなボロボロなって…弱い奴は惨めやなぁ。トンつく隊の隊員も、……シャオロン隊長も、ほんま惨めやわぁ。」
「このっ!!」
私は怒りのままチーノに殴りかかった。
「ははっ」
チーノは私の拳を軽々と避け、私の背に体重かけて倒す。
「もっとたくさん話をしたかったけどな、情報も手に入ったし…バレてもうたし…さよならしよな」
チーノの手には私が持ってきた書類。悔しさで涙が溢れる。泣かないと決めたはずなのに、止まらなかった。
「絶対に、許さない…!」
「我々ももう終わりやからなぁ。俺は強い方につくんよ。それが賢い生き残り方やで?」
ヒラヒラと書類で私を仰いだ後、彼は笑ったままパァンと拳銃で撃ったのだった。
「許さないから…ッ」
段々と薄れゆく意識の中でチーノの顔が歪んだように見えたのは気のせいだろう。
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鳩山(プロフ) - えみさん» コメントありがとうございます。懸命に生きる2人と彼らの話を素敵と言っていただき本当に光栄です…!最後までご愛読ありがとうございました! (2021年2月20日 16時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
えみ - rbr推しですがshaちゃんとくっついて欲しいと思ってしまう程の作者様の文才に引き込まれました…!とても素敵な話でした! (2021年2月19日 17時) (レス) id: 1597543406 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ブンブンさん» ブンブンさん!以前もコメントして下さいましたよね?本当ありがとうございます…!良かったら番外編でもよろしくお願いします…!最高に嬉しい言葉を本当にありがとうございました! (2019年11月11日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 完結おめでとうございます!貴方の作品に出会えて本当に良かったです! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - kogarashi343gooさん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ばかりで私からも感謝させてください!すごく励みになります…!今後は番外編然り、別作品然り、更新頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します! (2019年11月10日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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