夕陽と混じったサファイア ページ8
生徒会長選挙でAは声高らかに宣伝をしたのだ。───この世が、美しいものを素直に美しいと言えるように、と。
しかし、結婚というものいうものに縁のなかったAはそれが本当に汚いものなのか分からない。
「…ならショッピ様は、どのような結婚をお考えなのですか」
同じ王族であり、同じ世代の彼の答えが気になる。彼は伏せた目を上げ、Aを見据えて「俺は結婚とかしませんよ」とだけ言う。
「も、もしするとしたらですわ…！」
「絶対にしないと思いますけど…そうっすね。誰でもいいっす。その時は妻という肩書を持ってくれさえいればどんな人でも」
「……慕情はないと？」
「まあ、そういう風に育てられたので。第五皇子の価値なんてそんなもんっすよ」
ショッピの顔を見て、Aの胸がモヤモヤと渦巻く。
「もったいないですわ」
そして気づけばそんなことを口走っていた。ハッとして口を押さえる。
「何がもったいないんすか」
聞き流してくれればいいのに、そう簡単に撒ける相手ではなかったらしい。アメジストは静かにAだけを見ていた。こうなっては逃れることは出来ないと、Aは静かに手を下ろす。
「アメジストは、愛の守護石ですの。恋に溺れる少女達の強い味方でありますのに…アメジスト自身が恋を諦めてはもったいないですわ」
「…どこまで脳が花畑なんすか」
「確かにそうかもしれません。わたくしだって恋心なんてもの未だに分かりませんわ…。でも、いつか芽生えるかもしれないその感情を楽しみにしてますの。未来なんて誰にも分かりません。決まった道があるのなら違う道を作ってしまえばいいのです。」
その感情を手にする時がくるはずですから…とAは笑う。ショッピは怪訝そうに眉を歪めた。
「そんな感情、」
「ショッピ様、一度鏡で自身の顔を見てみてくださいませ。美男子が泣いてしまいますわ。きっとこれからたくさんの方々と出会い、恋に落としてしまうに決まってます。その中できっと…素敵な出会いがあるはずですから。諦めないでくださいね、ショッピ様」
淡い赤色に染められて、サファイアの瞳を持ったAの瞳が紫がかって見える。自分と同じ色に染まった彼女を見て、ショッピはどきり、と胸が痛んだ。
生まれてこの方、結婚なんて、ましてや恋愛なんて考えたことのなかった男が、だ。
「では、失礼しますわ」
その言葉を引き留める勇気はまだ彼にはなかった。
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夏目宮(プロフ) - 失礼します。ストラスブールのことなのですが、皇室があるのなら王国ではなく「皇国」ではないでしょうか？ (2022年3月28日 19時) (
レス) @page13 id: c1f3a10c7f (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 森安里さん» コメントありがとうございます…！二度目の人生で見えてくる視野も広がり彼女自身が成長するところを実感していただき嬉しいです。素敵なコメント並びに応援のお言葉をありがとうございました…！のんびり更新ではありますが今後ともよろしくお願いします！ (2020年12月8日 16時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
森安里(プロフ) - 王女様のどんどん成長していく姿に目が離せません。恋愛や友情が詰まった素敵な作品だと思います。これからも頑張ってください。応援しています! (2020年12月5日 13時) (レス) id: 0d0cef0762 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - がいこうかんさん» 外交官さん…！コメントありがとうございます！文章が美しいなんて最高の褒め言葉をありがとうございます！ゆっくり更新ではありますが今後ともお付き合いしていただければ幸いです！本当にありがとうございました…！ (2020年11月20日 22時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ゼアさん» コメントありがとうございます…！面白いというその一言でやる気が出ます！割と長いお話を一気に読んでくださりありがとうございました…！今後とも完結までよろしくお願いします…！ (2020年11月20日 22時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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