自分本位の皇女様 ページ6
二人して並んでゴミ袋を運んでいく。秋の夕暮れ、朧げな日差しを浴びた二人の髪の毛は同じように輝いている。会話もなくただ目的地を目指していたせいかすぐに終点に辿り着く。先に口を開いたのは、Aであった。
「…ありがとうございました」
「いえ、困っている人がいたら手を差し伸べることは当然のことだわ。あなただってそうでしょう？」
答えは勿論ノーであったが、Aは曖昧に笑って誤魔化した。なるべく面倒臭いことには関わりたくない…これが人間の本質であると分かっているからだ。そんなAの本心を知らずにオプロイテは良いように捉えたらしい。澄んだ真っ直ぐな眼差しをAに向けて言葉を続ける。
「私、ずっとあなたと話したかったの」
「…わたくしと？」
「えぇ。最近の活躍は聞いていたから」
「そんな…大したことはしていませんわ」
「少し失礼な言い方にはなるけれど、自分本位であるストラスブールの貴族にとってあなたの行いは立派よ」
彼女が聡明なエメラルドを優しく細める。小さく美しいその笑みを見て、Aは前世のことを思い出していた。
.
「…やはり私は国を離れるべきではなかったわ」
ストラスブール革命が起こった際に、王族の次に狙われたのは四大公爵家である。それを悟ったガオナァ公爵家は一足早く国外に亡命をした。そして残り三つの公爵らは、驚くことに国民の味方についたのだ。
拘束するAへ、ハイライトのない瞳を細めたのもまた、オプロイテであった。遠い先祖の血は同じ彼女だが思考までは似なかったらしい。
「何故、あなたがわざわざ帰ってきたのですか」
「……私の考えなんてあなたには分からないわ」
昔馴染みに向かい彼女はそれだけを言うとブロンドを靡かせて颯爽とその場から立ち去った。昔から、オプロイテは苦手だった。己が貴族であることを恥じるような彼女の言動が、誰よりも自分本位なAには理解できなかったからだ。
.
「立派なんて褒められるほどではありませんわ。…ではわたくしはこれで…」
「ねえ、A皇女様」
「…はい？」
「私ね、婚約が決まったの」
「…まあ、それはおめでとうございます！」
「ストラスブールを頼んだわ。あなたならきっと素晴らしい国にしてくれると思うから」
Aはその言葉に一瞬だけ彼女の方を振り向いた。オプロイテは胸に手を当てて祈るように笑っていた。
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夏目宮(プロフ) - 失礼します。ストラスブールのことなのですが、皇室があるのなら王国ではなく「皇国」ではないでしょうか？ (2022年3月28日 19時) (
レス) @page13 id: c1f3a10c7f (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 森安里さん» コメントありがとうございます…！二度目の人生で見えてくる視野も広がり彼女自身が成長するところを実感していただき嬉しいです。素敵なコメント並びに応援のお言葉をありがとうございました…！のんびり更新ではありますが今後ともよろしくお願いします！ (2020年12月8日 16時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
森安里(プロフ) - 王女様のどんどん成長していく姿に目が離せません。恋愛や友情が詰まった素敵な作品だと思います。これからも頑張ってください。応援しています! (2020年12月5日 13時) (レス) id: 0d0cef0762 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - がいこうかんさん» 外交官さん…！コメントありがとうございます！文章が美しいなんて最高の褒め言葉をありがとうございます！ゆっくり更新ではありますが今後ともお付き合いしていただければ幸いです！本当にありがとうございました…！ (2020年11月20日 22時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ゼアさん» コメントありがとうございます…！面白いというその一言でやる気が出ます！割と長いお話を一気に読んでくださりありがとうございました…！今後とも完結までよろしくお願いします…！ (2020年11月20日 22時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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