七つの大罪 ページ16
「身分が高く生まれたやつはええよなぁ」
ニコニコと微笑むオスマンがAに一歩近づく。何を考えているか分からないと思っていたその瞳は暗く光のない暗闇に存在している石ころのようであった。
「自分自身の存在が、罪やと思ったことはあるか？」
そんなこと、ないに決まっている。確かに前世においては自身の生き方が国民達の怒りを買ったことは分かるが今回ばかりはその生き方を清算しようと生きていたはずだ。それに、オスマンには貧困街を救った仮すらあるはずなのに。
「A・ラ・ストラスブール。お前の存在は罪や。」
彼がそっとAの首に手をかける。それが締まることはなかったが白い彼女の首に彼の熱が伝ってきて、静かに息をするしか叶わなかった。
「……何で存在が罪か分からんみたいやから教えてやるな。この世には七つの大罪っていう人の罪があるんよ。」
彼が指をおり、嫉妬強欲憤怒色欲暴食怠惰傲慢と呪文のように呟いて…「どれに当てはまると思う？」と笑った。
「わたくしは、……思い当たる節はありません」
水面に波紋が広がるように音もなく彼は笑った。それは美しい笑みだった。やはり感情は読めなくて、Aは口を閉ざす。
「自覚なしの子を正しい道に導くのが俺の仕事やからね。教えたるわ。」
首元から手を離して、オプロイテを手招きする。
「脱げるか？」
「はい」
オプロイテは重たそうな銀の鎧をその場で脱ぎ捨てる。女性が人前ではしたない、と声をあげそうになったがそれは叶わなかった。
「…っ」
真っ白な彼女の肌に場違いな赤紫のミミズがいくつも何重もそこに刻まれていた。服の下に隠された様々な傷にAは声すら出せない。
「なあ、ストラスブール国王様。あんたは姫殿下に婚約の話が持ちかけられたら何て返したんや？……あぁ、今は話せんのやったな。姫以外の公爵家や貴族にその話を流していったやろ。それも国王命令として」
あまりにも冷たい声。
「何人もの令嬢達が犠牲になったかは分からん。…… ゾラ・ラフィルモンのことも忘れたとは言わせんで」
ゾラ・ラフィルモン。彼の言葉に、トルマリンを輝かせる女性を思い出す。貴族社会に似合わない公平で優しい思いやるのあるAにとって姉のような存在だった。
「あんたらの罪は傲慢や。己の地位を鼻にかけて弱者の逃げ道を奪う。…強欲でもあり、怠惰ですらある。ここまで言えば全部もう、分かるやろ」
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夏目宮(プロフ) - 失礼します。ストラスブールのことなのですが、皇室があるのなら王国ではなく「皇国」ではないでしょうか？ (2022年3月28日 19時) (
レス) @page13 id: c1f3a10c7f (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 森安里さん» コメントありがとうございます…！二度目の人生で見えてくる視野も広がり彼女自身が成長するところを実感していただき嬉しいです。素敵なコメント並びに応援のお言葉をありがとうございました…！のんびり更新ではありますが今後ともよろしくお願いします！ (2020年12月8日 16時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
森安里(プロフ) - 王女様のどんどん成長していく姿に目が離せません。恋愛や友情が詰まった素敵な作品だと思います。これからも頑張ってください。応援しています! (2020年12月5日 13時) (レス) id: 0d0cef0762 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - がいこうかんさん» 外交官さん…！コメントありがとうございます！文章が美しいなんて最高の褒め言葉をありがとうございます！ゆっくり更新ではありますが今後ともお付き合いしていただければ幸いです！本当にありがとうございました…！ (2020年11月20日 22時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ゼアさん» コメントありがとうございます…！面白いというその一言でやる気が出ます！割と長いお話を一気に読んでくださりありがとうございました…！今後とも完結までよろしくお願いします…！ (2020年11月20日 22時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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