君が肯定してくれる ページ19
「……信じてくれるの」
「夢の話を丸々信じるわけではないが実際にうちに観光客が居るとロボロは疑っていたからな。」
グルッペンの赤い瞳が、私を射抜くように見つめる。
「それに女の勘はよく当たる。Aの働きには何度助けられてきたか。」
「グルッペン…」
「お前の話なら信じれる。だから自信を持て。お前の考えならきっと正しい。誰かがお前を否定したとしても…俺が、俺達が肯定してやる」
シャオロンを何度も何度も失った私にとって。
自分のやっていることが正しいのか分からなくなってしまった私にとって。
その言葉がどれほど嬉しかったか。
私は頰を伝う冷たいものに気づかないフリをして、グルッペンに精一杯笑いかけた。
「そうだよね…女の勘は当たるもの」
立ち上がった私を見たグルッペンもまた口角を上げる。
「やっとAらしくなったな」
「グルッペン、本当にありがとう」
私の背中を叩いたグルッペンの顔を見れば、彼は力強く頷いた。
.
..
...
総統の命令により今日の合同訓練は中止となった。
非番になった機動部隊はみんな各々で休みを過ごしていた。私もまた基地内にあるテラスでゆっくりと時間を潰す。これほど晴れやかな気持ちになれたのは久しぶりだ。
「A」
名前を呼ばれて、振り返る。
そこには隊服ではなく私服を着たシャオロンの姿があった。
「シャオロン」
私もまた名前を呼び返すと彼は軽く手を上げて、許可も取らずに私の隣の席へと座る。
「訓練場の話は聞いたか?」
「…聞いてないけど」
「時限爆弾が見つかったんやって」
「えぇ。本当に?」
「おん。トントンが爆弾処理に向かったで。」
「トントンなら安心して頼めるね。」
「事前に見つけることが出来たらあいつなら絶対成功させるもんな。」
トントンへ熱い信頼を寄せる私達は基地内に爆弾が仕掛けられているというのに焦りは一切ない。
「なあ、A」
「なに?」
シャオロンが何か私に言おうとしたその時、第二機動部隊副隊長は総統室へ来るよう館内放送が鳴り響いた。
「今日はやけに事件が多いのね。で、シャオロンどうしたの?」
「…やっぱ何でもないで」
「なにそれ。気になるんだけど」
「ほんまに何でもないから忘れてや」
「余計気になる…」
じっとシャオロンを無言のまま見つめれば、シャオロンは私の額をデコピンして弾く。
「あんま可愛いことせんといて。」
「…えっ?」
「また好きになるやろ?」
そう言ってシャオロンは優しく笑った。
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白いろきつね。(プロフ) - 今更ながらに読ませていただきました すごい心を持っていかれるお話で涙腺が崩壊しながらも読ませて貰いました ループで心が壊れていく夢主さんを見ていて感情移入しちゃって、本当に心を揺さぶられる最高の作品でした。主様書いて下さり本当にありがとうございました! (2021年8月11日 0時) (レス) id: 02f1a6e36f (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 菜乃さん» コメントありがとうございます…!死に戻りは私の性癖でして、設定好きと言われて喜んでます。この作品はお気に入りの一つなのでコメント頂けて幸せです。こちらこそありがたいお言葉をたくさんありがとうございました。またどこかでお会いできることを願っております (2020年6月27日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ・ちょこみんとさん» コメントありがとうございます…!流した涙がもったいないですよ(そっとハンカチを差し出す)本当に素敵なお言葉をありがとうのざいます!ちょこみんとさんからの言葉で今後も文字書きとしてやっていこうと思います。ありがとうございました…! (2020年6月27日 18時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
菜乃(プロフ) - 今更ながら一気に読ませていただきました…!めちゃくちゃ号泣しました…!このお話設定やストーリーも鳩山さんの文字の書き方も全部が好きで勢いでコメントしてしまいました…。素敵な作品をありがとうございました!! (2020年6月27日 15時) (レス) id: a5b7bd47a4 (このIDを非表示/違反報告)
・ちょこみんと - 全話一気に読まさせて頂きました!涙がボッロボロに出ました…感動します…鳩山さんの作品が大好きです!これからも頑張って下さい! (2020年6月27日 15時) (レス) id: 87dd4c4135 (このIDを非表示/違反報告)
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