Après la pluie, le beau temps ページ49
「ひとらん、こっちや!!」
彼の仲間の声が二人を誘導する。戦場と化した処刑場を振り返れば魏国の王と梦国の王は拘束されていた。二人の前には見たことのない男が立っている。真っ白な軍服を着たひとらんとは正反対の真っ黒な軍服を着た男。色素の薄い金髪のその男は愉快そうにしかし品のある笑い方で二人を見ていた。
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戦争は二人の国王が投降したことにより収束した。
魏国もまた第三王子が国王となり国を立て直すようである。
Aは今、王女という身分を捨てて我国の小さな町で暮らしている。小さな町ではあるが美しい教会が近くにあり満足していた。
「おや、お嬢さん、今日も来たのですか」
「はい。毎日お祈りしないと気が済まなくて」
「神もお喜びになります。どうぞこちらへ」
Aは今日も祈る。
自身が生きていること、そして────
「A、今日は俺が来てるんだから神じゃなくて俺に時間を使ってよ」
彼が生きていることに感謝するのだ。
「生まれた頃からの習慣を変えられるわけないでしょ」
「町にきて少しはまともになったかと思えば全然丸くなってないな」
「失礼ね。これでも町一番の美人って言われてるのよ?」
ひとらんらんとAの手は重なっている。口では素直になれずとも二人を見ていた町人たちはそんな二人を幸せそうだと眺めていた。
「せっかくの休暇だ。馬に乗って少し出掛けない?」
「えぇ、もちろん。私、湖に行きたいわ」
慣れた様子で馬に乗るAの後ろにはひとらんらん。馬を数分走らせて町のほとりにある湖へ辿り着く。
水面が陽の光に照らされて輝いている。
Aは湖に近づくとひとらんらんの方を見て笑顔を浮かべた。
「白い軍服を着た貴方へ。歌を捧げるわ」
大好きな彼に、愛の歌を贈る。
どうしてもAの性格上、素直に好きとは伝えられなかったから。
Aの心に深く刻まれた軍服姿の彼。
きっと忘れられないこの思いを、歌にのせて。
ひとらんらんはその歌を聞いて優しく笑う。
祝福するかのように小鳥がさえずり、木々は風に揺られて踊る。二人は紛れもなく緩やかな幸福に包まれていたのであった。
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鳩山(プロフ) - 114514さん» コメントありがとうございます…!(そっとハンカチを差し出す)難民さんに刺さるお話があれば幸いです! (2020年7月3日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
114514 - ぐはっ(吐血) (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます…!難民として完結できたことを誇りに思います!今後とも活動は続けていきますのでよろしくお願い致します…! (2020年4月7日 17時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - htrnさんの素敵なお話ありがとうございました……! (2020年4月7日 7時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 外ピさん» コメントありがとうございます!htrnは私の最推しでして、自給自足のためにこの作品を作りました。その言葉に私は咽び泣くほど嬉しいです…!ありがとうございました!もう終わりに近づいてはおりますが、今後ともよろしくお願いします! (2020年3月29日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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