Après la pluie, le beau temps ページ46
あれから数日後、我国の領土でひとらんは発見された。大量出血と傷口からの感染症、そして薬を使用されたことによる副作用、と発見された当初は生死を彷徨うほどの重篤な状態であった。
医務室にて臥床していれば、グルッペンがやって来た。次会った時は必ず殴ってやると決意していたはずなのに彼の顔を見ると安心してしまってひとらんはひどく泣きたい気持ちになる。
「…今回はご苦労様だった。魏国との同盟はなくなった」
「ってことは、Aは」
「急な話だが来月に正式に梦国に嫁ぐことが発表された。」
「来月…」
「あぁ。第一王子は暗殺され、第二王子が正式な魏国の王となった。第二王子は先代とは違い我国に対して良くは思っていないらしい。梦国へ妹を嫁がせることにより同盟を締結。その同盟は世界へと発信された」
無意識のうちに唇を噛む。痛みなんて感じる間々もなく口の中に鉄の味が広がった。
「グルッペン。我国と梦国は敵対関係だったよな?」
「あぁ。仮想敵国としてシミュレーションしているぐらいだ。」
「……戦争の準備は?」
「…はっはっはっ!まさか、平和主義者のお前から戦争なんて言葉が聞けるとは…!………一体どういう心境の変化だ?」
グルッペンは大笑いして、眼鏡を外す。目に溜まった涙を拭いてヒィヒィ言いながらもひとらんに問うた。
「────護りたい人がいるんだ。」
笑い事にされたってひとらんは彼の母国の刀のように真っ直ぐ、曲がることなく言い放つ。
その言葉を聞いたグルッペンは、目を細めて口元を緩ませたまま「そうか。ならば戦争を始めよう」と踵を翻すのであった。
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この城は、馬で駆けたあの道よりも広いはずなのに息がしづらい。最上階から見る窓の外の景色は見通しがいいはずなのに全てがモノクロに見えて綺麗とは思えない。
Aは梦国の王宮の最上階に閉じ込められていた。
あの日ひとらんが眠ってしまってすぐに増援がやってきた。その中には第二王子の姿があり、ひとらんの命が欲しければこれを飲ませろと指示をされたのだ。
背中に剣を突きつけられてAは抵抗をすることが出来なかった。彼の命のために、自身が彼に手をかける他なかったのだ。
もう会うことはない彼を瞼の裏で思い返す。
思い出の中の彼は優しく強いまま。
彼が、湖で歌った歌を褒めてくれたのは忘れない。
あの一瞬から、Aの心は彼に奪われてしまったのだ。
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鳩山(プロフ) - 114514さん» コメントありがとうございます…!(そっとハンカチを差し出す)難民さんに刺さるお話があれば幸いです! (2020年7月3日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
114514 - ぐはっ(吐血) (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます…!難民として完結できたことを誇りに思います!今後とも活動は続けていきますのでよろしくお願い致します…! (2020年4月7日 17時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - htrnさんの素敵なお話ありがとうございました……! (2020年4月7日 7時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 外ピさん» コメントありがとうございます!htrnは私の最推しでして、自給自足のためにこの作品を作りました。その言葉に私は咽び泣くほど嬉しいです…!ありがとうございました!もう終わりに近づいてはおりますが、今後ともよろしくお願いします! (2020年3月29日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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