Après la pluie, le beau temps ページ44
ひとらんは、立っているのがやっとの状況であった。たたでさえ人数の差があるのに、彼にとって最も苦手である飛び具を使う相手に苦戦を強いられてしまっていた。
しかし彼は負けられなかった。
自分の背には、護らなければいけない人がいる。
自分が死ねばきっと彼女は死んでしまうだろう。
それが今の彼の力となっていた。
どれだけ血を流したって、倒れなければ。
.
「………終わった、よ。」
ひとらんの小さな声はAの目を開かせる。瞳のピントが合わずに周りがぼやける。そんな中でAの視界に一番に飛び込んできたのは自分を守ってくれた彼であった。
「、っ!! あなた、う、腕に…っ!?」
彼の腕には敵から受けた矢が刺さっていた。それも右手。彼の利き手である。軍人として戦う彼にとって致命的な傷を見てAは何か出来るわけでもないのに近づく。
「…ちょっとヘマしちゃった。おっと…敬語忘れてたや。…A様は怪我はないですか?」
こんな時に戯ける人だとは思わずAは怒りのまま自分の着ていた服の裾を破る。
「こんな時に人の心配するなんて、貴方はお馬鹿よ……。ふ、震えてうまく結ばないわ…。リボンだったらすぐに結べるのに」
震えてる手で血濡れた彼の腕に包帯代わりに自分の服を結んであげたい。なのに指先は言うことを聞かず震えるだけ。真冬でもないのに悴んだ時のように指先に力が入らなかった。
「……泣かないで。俺は、生きてるんだから」
震える理由。
恐怖とか怒りとか、そんなものではなくて、
自分が泣いていたからであった。
ひとらんらんは自由に動く左手を使って、Aの手に重ねる。
「俺がこっちを待つから、A様はこっちを引っ張ってください」
彼の力を借りて、うまく前が見えないまま引っ張った。すると先ほどまでが嘘のように傷口が塞がっていく。
「ありがとうございます。……少しだけ、休憩してもいいですか?」
ひとらんらんの優しい声にAは頷くしかなかった。
.
歌が聞こえる。湖で聞いた覚えのある耳心地のよい美しい歌が。
憂いないでくれ。そう思ってひとらんは夢の世界へと旅立つのだ。
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鳩山(プロフ) - 114514さん» コメントありがとうございます…!(そっとハンカチを差し出す)難民さんに刺さるお話があれば幸いです! (2020年7月3日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
114514 - ぐはっ(吐血) (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます…!難民として完結できたことを誇りに思います!今後とも活動は続けていきますのでよろしくお願い致します…! (2020年4月7日 17時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - htrnさんの素敵なお話ありがとうございました……! (2020年4月7日 7時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 外ピさん» コメントありがとうございます!htrnは私の最推しでして、自給自足のためにこの作品を作りました。その言葉に私は咽び泣くほど嬉しいです…!ありがとうございました!もう終わりに近づいてはおりますが、今後ともよろしくお願いします! (2020年3月29日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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