Après la pluie, le beau temps ページ42
朝日が顔を出して、歩きやすくなった頃。
ひとらんは再び彼女と共に馬に乗っていた。もうすぐ国境を越える。
彼は昨日の夜からどこか様子のおかしかったAの後ろ姿を見つめる。彼女はひとらんが歌を褒めてからというもの、生意気な態度はどこへやら「もう寝ます」と付けたような敬語を使い、野宿なのも気にせず目を瞑った。目が覚めても控えめに「おはよう」と挨拶するぐらいで目を合わせようとしないし馬に乗せようと腰を掴んでも借りてきた猫のように大人しかった。
まあ、任務に支障が出なければいいか、とひとらんはさほど気にも留めず馬を走らせる。
.
ひとらんは戦いを好んでいない。
戦争か平和かと言われれば迷わず平和を選ぶ。
しかしひとらんが戦いを好いておらずとも、戦いは彼を愛していた。そのためひとらんは血の臭いには人一倍敏感となっていた。
「A様、フードをお被りください」
「…急にどうしたっていうの?」
「血の臭いがします。顔を隠していた方が身のためです。」
ひとらんが後ろから彼女のフードを深く被らせる。
「…っ」
──走ったその先には、森の中に似つかない人間の死骸が多く散らかっていた。まだ鮮やかなその血を見てひとらんは舌打ちする。
倒れる死骸は、我国の兵と魏国の王軍であった。
なるほど、狙いは彼女。
咄嗟に進路を変更させるが、パシュッと独特な矢の音が聞こえてきた。
「きゃっ!?」
「くそ…っ!」
そして次に走るのは馬から落とされた衝撃。彼女は怪我させるまいと小さな体を包んで地面に転がる。
「外道丸…!」
愛馬の足には数本の弓矢が刺さっている。衝撃で人こそ落としてしまったもののパニックにならずにその場で留まってくれる愛馬。自分は大丈夫だと鼻を鳴らした馬へありがとう、と気持ちを込めて撫でてやる。
「ひとらん、これは一体どういうことなの、」
彼女の目にも横たわる兵士が目に入ってしまったらしい。
「…この兵達を、わたしは知ってる…お父様の…」
血濡れることを恐れずに彼女は、そっと兵の頰を撫でた。
「誰かが君を裏切った。君は、嵌められたみたいだ」
ひとらんは抜刀する。
ひとらんがこの世で一番嫌いなもの。
それは裏切りだ。
「はめ、られた…?」
「グルッペンは国境を越えれば君の世話役と合流できると言っていた。でも現状はこうだ。…だからあいつはわざと俺に国境を越えるまで、ではなく三日間と言ったのか……」
ひとらんの中の全てのピースが当てはまった。
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鳩山(プロフ) - 114514さん» コメントありがとうございます…!(そっとハンカチを差し出す)難民さんに刺さるお話があれば幸いです! (2020年7月3日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
114514 - ぐはっ(吐血) (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます…!難民として完結できたことを誇りに思います!今後とも活動は続けていきますのでよろしくお願い致します…! (2020年4月7日 17時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - htrnさんの素敵なお話ありがとうございました……! (2020年4月7日 7時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 外ピさん» コメントありがとうございます!htrnは私の最推しでして、自給自足のためにこの作品を作りました。その言葉に私は咽び泣くほど嬉しいです…!ありがとうございました!もう終わりに近づいてはおりますが、今後ともよろしくお願いします! (2020年3月29日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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