Après la pluie, le beau temps ページ41
「私に野宿させるですって?」
ありえない。といった表情をマジマジと出して彼女は腕を組む。
「ここは国境沿い。貴女を狙う刺客がもう動き出してもおかしくはありません。最短で我国に向かうためにも…」
何度目かのひとらんの説明により彼女は渋々頷いた。
「でも、私寝る前に絶対入浴したいの。水で我慢するわ。湖を探して頂戴」
その妥協案にひとらんもまた渋々頷く他なかった。
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「いい!?覗いたら魏国の全てを使って貴方を最も重い刑にするからね!」
「はいはい。分かりましたから。俺はここで火番しておきますのでA様はゆっくり…」
「なによ、こんな美少女が近くで裸になるっていうのに欲すら沸かないの?貴方って不能?」
「………早く行ってきてください…」
どう答えるのが正解なんだ。若い子怖い。
これが今のひとらんの心境である。やっと静かになって気を抜いて地面に座り込む。
──
ひとらんの耳に聞こえてきたのは心地よいメロディ。大地に溶け込む美しい歌声であった。もし今が昼まであったのなら小鳥のさえずりに合うだろう神秘的な声。
「…ふーん。すごいところもあるんじゃん」
その唄は遠い記憶の母の子守唄のように、ひとらんの耳に優しく届く。温かい火がまた彼の眠気を誘って……。
「ちょっと!何寝てるのよ!」
ひとらんはその声に即座に刀を抜き取り、声の主へ向けた。「ひぃ」と漏れたか弱い声は聞き覚えがある。まだ覚醒しきれない頭を回転させて、闇夜の中で目を開く。
「A様、」
「だだだれにむかってけんをむけてるのよ!このおろかもの!」
腰が砕けているのだろう。尻餅をついたAは震える声を隠そうとせずに叫ぶ。ちなみに瞳には涙が浮かんでいた。
「も、申し訳ありません」
「ぜーったい許さないから!」
手を差し出しながら謝るも随分と機嫌を損ねてしまったようで、彼女はひとらんの手をはたき落とす。
「護衛が寝るなんてほんと考えられない…っ!」
「A様の声が心地良くて聞き入ってしまってました」
「……なんですって?」
「歌、お上手なんですね」
ひとらんは生意気な彼女へ微笑みを向けた。
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鳩山(プロフ) - 114514さん» コメントありがとうございます…!(そっとハンカチを差し出す)難民さんに刺さるお話があれば幸いです! (2020年7月3日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
114514 - ぐはっ(吐血) (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます…!難民として完結できたことを誇りに思います!今後とも活動は続けていきますのでよろしくお願い致します…! (2020年4月7日 17時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - htrnさんの素敵なお話ありがとうございました……! (2020年4月7日 7時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 外ピさん» コメントありがとうございます!htrnは私の最推しでして、自給自足のためにこの作品を作りました。その言葉に私は咽び泣くほど嬉しいです…!ありがとうございました!もう終わりに近づいてはおりますが、今後ともよろしくお願いします! (2020年3月29日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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