【d!】白い軍服を着た貴方へ【htrn】

Après la pluie, le beau temps ページ40

「失礼します」ひとらんは、彼女の腰に手を当てて馬の上へと持ち上げる。

「ちょっと、まって、きゃっ！」

しかし彼女は馬ではなくひとらんらんにくっついたまま離れようとしない。豊満とは言えない絶壁の胸を押し付けながらぎゃあぎゃあ騒ぎまくっている。

「お、落ち着いてください…！」
「まずはおろしなさいよ！この無礼者…っ！」
「わかっ」
「きゃああ！い、今、馬が舐めたわ！？わたしを舐めたの！！」
「いやだから下ろすから暴れないで！？」

心優しい馬が彼女の頰を舐めた。それだけで彼女はパニックとなっており、二人で騒ぐこと10分が経過。息を切らしながらもやっと彼女は落ち着いたらしい。いかにも高級そうなハンカチで頰を何度も擦っては文句を垂れている。

「あのー…A様。馬に乗ったことがあるというのは…？」
「ポニーと馬と一緒でしょ？こんなに大きなポニーは初めて見たわ」
「あの、ですね。馬とポニーは別物です。」
「えぇ…？でも先生は乗馬の訓練だと仰っていたわよ？」
「はぁ……えっと、」

ひとらんは眉間を抑えながら、覚えの悪い彼女にポニーと馬の違いから説明する。そして、まだ一人で乗馬すらままならない彼女は自分と共に一頭に乗ることも伝えた。

「ふーん。同じ馬に乗るのね。私が可愛いからって変な気を起こすんじゃないわよ？」

にまにまと、いかにも王族と言った人を見下す視線。ひとらんははいはい、と適当に流す。

「また持ち上げますから今度は俺じゃなく、馬を掴んでくださいね」

その言葉に顔を真っ赤にしたのはAであった。

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「とっても風が気持ちいわ！ポニーでのお散歩とは全く違うのね！」

ただの我儘王女かと思っていたが、ひとらんと無事に馬に乗った彼女の声は明るい。自身が後ろに乗っているせいで顔は見えないもののきっと瞳を輝かせているのだろう。

「A様。口は開けないように。舌を切りますからね」
「えっ、なによそれ！なら舌を切らないぐらいゆっくり走りなさいよ！ほら、馬もちゃんと聞きなさい！」

馬に対して怒り出す彼女をみて、やはり我儘なのは変わりないなとひとらんは呆れたまま馬のスピードを落とすのであった。

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