「心臓に耳を当てて」 ページ34
「ごめんね、待たせちゃって」
カランと本屋の扉のベルが鳴って出てきたのはA。ひとらんの前に立つオスマンが彼に手を差し伸ばして固まっているところを目撃して、不思議そうに首を傾げる。
「……さあ、ひとらんらん帰ろうっか」
オスマンが差し出した手を見ぬふりしてひとらんの服の裾を掴む。
「失礼。きみはこの男とどのような関係なん？」
オスマンが深い碧の瞳を細める。Aはフードを被ったまま「友人です」と告げた。
「声と背丈からして若いな。フードを取ってもらってもええかな？」
「…いやです」
「一応俺はこういうもんなんやけど」
オスマンは襟元についた徽章を見せてくる。そこでやっとひとらんは彼がこの国の者…王の関係者であることを知る。Aもまたゆっくりとフードに手を掛けてオスマンに姿を現す。
「これで、満足ですか？」
淡い茶色の髪の毛と黒色の瞳。どこから見たって普通の彼女なのにオスマンの顔はひとらんと話している時とは違い、警戒心を丸出しにしていた。
「…君は、ライラックの話を知っとるか？」
「…すみません。何故、噂話には疎いものでして」
「王国は魔女狩りを行った。魔女は一月前に全滅したはずなんやけどな、まだ生き残りがおるんやって」
「そうですか」
「その魔女の瞳は
「このローブは祖母から貰ったものなんです。年季も入ってますし、確かに紛らわしいですね。」
Aもまたにこにこと笑う。その顔はひとらんに見せる穏やかなものではなく、こちらも警戒心が強いようだ。
「森の奥には魔女が住むって話やし、二人も気をつけるんやで。あ、それとひとらん。何か思い出したら王都まで来るんやで？みんなには無事やって話しとくからな」
「あぁ。ありがとうオスマン。また、準備が出来たらよろしく」
「おん。いつでも大丈夫やで〜。それと君も元気でな」
「はい。では、失礼します」
並んで歩く凸凹な二人の後ろ姿をオスマンは静かに見つめていた。
「どういうことなんや。何であいつと、ひとらんが…？」
オスマンの声は雨音で消されてしまって───。
どうやら考える必要がありそうだと、彼は急いで王都へと帰ることにしたのであった。
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鳩山(プロフ) - 114514さん» コメントありがとうございます…！（そっとハンカチを差し出す）難民さんに刺さるお話があれば幸いです！ (2020年7月3日 19時) (
レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
114514 - ぐはっ（吐血） (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます…！難民として完結できたことを誇りに思います！今後とも活動は続けていきますのでよろしくお願い致します…！ (2020年4月7日 17時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - htrnさんの素敵なお話ありがとうございました……！ (2020年4月7日 7時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 外ピさん» コメントありがとうございます！htrnは私の最推しでして、自給自足のためにこの作品を作りました。その言葉に私は咽び泣くほど嬉しいです…！ありがとうございました！もう終わりに近づいてはおりますが、今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月29日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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