初恋は叶わない ページ21
「ひとらん。ゴミを捨てて来てー」
夕飯作りと動物の世話で大変な母さんから、ゴミ捨ての指示があった。忙しく動く母さんを見ていると断る気にもなれず渋々ゴミ捨てへ向かう。ゴミを捨てに行くと言っても事実上、家の前に捨てるだけでそこまで苦にはならない。外に出てみれば寒さは尋常ではなく冬を実感した。
そして隣の敷地から鈴の音のような心地の良い声が聞こえてくる。
「ひとらん」
聞こえてきたのはAの声で、それだけで寒さは吹き飛んでしまった。少し待っててと言われ待っていれば家の塀をよじ登るAの姿。ワイルドすぎる彼女の行動に自然と笑いが出てきて爆笑していれば彼女は頬を膨らませていた。そんなところも、やっぱり可愛かった。これが惚れた弱みというやつだ。
「で、野蛮人は俺の家まで何の用？」
「野蛮人じゃないから！……ちょっと相談したいことがあって」
クルクルと髪の毛の先で遊ぶ彼女。それはAの癖で、昔から何度もあった。きっと何かあったのだろう。
「結構深刻なやつでしょ？」
「えっ、何で分かるのよ」
「15年間の幼馴染みをなめるなよ」
「ひとらんには隠し事出来ないね」
しばらく口を閉ざしたA。俺は急かすことなく静かに彼女が話し出すのを待っていた。数分経ったのだろうか…実際には数秒かもしれない。彼女は意を決したように顔を上げた。
「きょ、今日ね、ゾムくんに告白されたの」
一瞬息が止まる。
「え、っと、良かったじゃんか！付き合うんだろ？」
「…うん。けど、付き合うとかよく分からなくて…好きなのに返事できなかったの」
"好きなのに"
直接、違う男が好きと言われるのはやはりきついものがある。Aは下を向いていて今にも泣き出してしまいそうであった。
「ゾムくん、困らせちゃった…」
「なに泣きそうになってんの」
「泣いてないもん」
「今はね。…はぁ。好きなら好きって言えばいいじゃん」
「そんな簡単に言わないでよ。ひとらんは好きな人いないからそう言えるんだよ…」
ぐさり。
「…恋してなくても分かるよ」
泣きそうな彼女を前に無理に責めない。優しく、笑いかけて頭を撫でれればごめんとすぐに謝ってきた。
「ゾムはそんなことで気持ちは変わらないよ。Aの準備が出来たら今度こそ伝えな？出来るでしょ？」
俺の声は震えていなかっただろうか。
彼女がゆっくり頷く。
「頑張れよ」
…俺は、笑えているだろうか。
(きみをいちばん理解しているつもりだけど)
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鳩山(プロフ) - 114514さん» コメントありがとうございます…！（そっとハンカチを差し出す）難民さんに刺さるお話があれば幸いです！ (2020年7月3日 19時) (
レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
114514 - ぐはっ（吐血） (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます…！難民として完結できたことを誇りに思います！今後とも活動は続けていきますのでよろしくお願い致します…！ (2020年4月7日 17時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - htrnさんの素敵なお話ありがとうございました……！ (2020年4月7日 7時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 外ピさん» コメントありがとうございます！htrnは私の最推しでして、自給自足のためにこの作品を作りました。その言葉に私は咽び泣くほど嬉しいです…！ありがとうございました！もう終わりに近づいてはおりますが、今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月29日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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