もう一つの物語（sha） ページ21
(落ちた先には…前編にて夢主が元の世界へ戻っていたら)
あの出来事はまるで夢のようであった。
最後の最後、総統の言葉に対して私はこれ以上ない大声を張り上げて「ありがとう」と別れの言葉を告げた。たくさんの感謝を込めて。
穴から落ちた先には…私のいつも通りの通学路に戻っていて。傷ついた痕だけがそれは夢ではなかったと物語っていたのだ。
「あぁ、戻ってきたんだ…」
私は傷だらけのまま家に戻る。あの後私は彼らの元にいた日数分行方不明になっていたらしい。ボロボロの私を見た両親は泣いて崩れ落ちて、すぐさま病院に連れて行かれた。
検査入院として数日間経ち、今日は退院の日。
私は退院手続きを済ませている母親を待合室で待っていた。するといつも私を担当してくれた看護師さんが慌てた様子で廊下を小走りしているのが見えた。彼女は私の姿を視界に捉えると笑顔で向きを変えてこちらに挨拶をしてくれる。
「Aちゃん！今日退院だったのね。無事に帰れそうでよかった」
「看護師さん、お世話になりました」
「いいえ〜。退院前にごめんね。一つ聞きたいんだけどここら辺であなたと同い年ぐらいの男の子みなかった？」
「男の子…？見てないですけど…」
「ここじゃなかったのね…うん、ありがとう！もうあの子ったら…検査前っていうのにどこに行ったのかしら…」
「看護師さんも…た、大変ですね…」
「そんなことないわ。Aちゃんも気をつけて帰ってね。お大事に」
ニコニコと笑った看護師さんはまた早足で病棟へと戻っていく。その速さはさながら忍者のようで感心してしまった。
「あー、やっと行ったか…ここまで探しにくるとは驚いたわぁ」
そして背後から聞こえた男の声。
忘れもしないその声に、私は勢いよく振り返る。
「うわっ、なんや、ちっかいわ！？」
思ってたよりもその人物と私の距離は近かったらしい。鼻先が打つかる数十cmの距離に彼は立っていた。いや、性格には私の座っていたソファの後ろに手をかけていたのだが。
「しゃ、ろおん？」
「あれ、何で俺のあだ名知っとるん？どっかで会ったことあったか？」
無意識のうちに体が勝手に動いてしまう。
涙が溢れて、そして私は彼の胸を借りるように泣いてしまった。
「ほんま誰なん…！？ きゅ、急に泣くなや！離れろ！ いや、どうしたらええねん！？」
あわあわと慌てるシャオロン。言葉とは反対に彼は優しく私の背中を撫で続けてくれるのであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 759人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
🍞 - ご、語彙力が爆発してる、、すごすぎんか？ (9月24日 22時) (
レス) @page42 id: 42c1ea8f94 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんいつもありがとうございます…！番外編まで読んでくださって感謝しかありません…！また他作品は更新していくつもりですので今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月14日 20時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます！本編のほうも、番外編のほうも、鳩山さんの素晴らしい文章に引き込まれ、読んでいて幸せな気分になれました。これからも鳩山さんの作品を読み続けさせてください…！ (2020年3月14日 13時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - メオさん» コメントありがとうございます！告白までしていただいて嬉しいです！これからものんびり更新だと思いますがよろしくお願いします…！ (2019年11月12日 19時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
メオ - うん、好きだ(確信)ありがとう(嬉し泣き)頑張ってくださいね！！ (2019年11月12日 14時) (レス) id: 8aa2d098f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
