【d!】アキレアの祝福を【企画】 (ページ18)

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愛を囁くにはページ18

筆記、実技ともにパスしたところで冒頭のやり取りに戻る。

最後の面接試験で総統閣下直々に面接官をしていたことにAは驚いていた。

彼に聞かれた何のために軍に入るのかという質問にAは父がいつも言っていたのと同じように家族のためと答えた。それから国のためなど馬鹿馬鹿しいと。

総統閣下は「家族のために」という言葉だけで彼女の父を言い当てた。どうやらあの戦争で帰ってくることが出来た暁にはさらなる昇格の話も出ていたらしい。

Aは能力は申し分なく、彼が気に入ったということもあり父と同じPDTへの配属が決まった。

そこからの5年間は怒涛の日々だった。普通の訓練に加えて極秘任務や遠征、密偵など他の部隊に比べてただでさえ仕事量が多いというのにも関わらず直ぐに逃げ出す上司のせいで更に仕事量は増えていた。しかし、部隊の人間は皆彼を慕っていた。

Aは初めは何がいいのか分からなかった。仕事の放棄や次々と出される無理難題。それを嬉々としてこなす同じ部隊の仲間たちを彼女は病気かなにかでは無いかと疑っていた。しかし1年もすればAは仲間たちと同じように彼の良さがわかるようになった。

しかしそんな中Aだけは業務が異なることが多くなっていった。ここ1年ほどはずっと要塞で総統閣下の秘書のような役割をしていた。彼が彼女を外に出さなかったのだ。今回の戦争への参加も本当は認められず本部へ待機するように言われていた。しかしAは大きな戦争ということを知り反対を押し切る形で参加していた。

そして迎えた今日。この戦争は軍に入ってから1番大きなものだった。

どこまでも果てしなく続いているのではないかと勘違いさせるような平野で彼女は走っていた。手には銃を、腰にはナイフを何本か刺し敵兵の中へと突っ込んでいく。元々他の部隊とは別のところ、敵兵の多い地へと突撃する作戦ではあったがあまりにも多すぎる気がする。

銃声、悲鳴、怒号

色々なものが混ざりあった音が辺り一面に響く。Aは極力その音を聞かないようにしながらインカムを通して聞こえてくる上司の声を頼りに着々と進んで行った。

だんだんと赤いものが黒くなりながら地面を侵食していく。彼女の通った道には敵も味方も含めかつて人だった物が転々と転がっている。