覚悟なんて後付けが丁度いい ページ44
「くっそ…あの隊長いつかボコる…」
座りすぎて痺れたお尻を摩りながら歩く。食堂で悪口を聞かれた以来、何故か私が隊長の愚痴を言っている時に限ってあの男は現れる。さらには特訓漬けの毎日。確実にあの男は根に持っていた。身長だけでなく心まで小さい男だ。愚痴すら言えない環境に私のストレスは募るばかりで、いつ爆発してもおかしくはなかった。チビで、大した戦力もなく、ただモニター越しに戦況や作戦を伝える。一般兵が慌ただしく情報をかき集める中、上官は座ったまま。それすら気に食わない。
「早く辞めたい…」
夜風が私を撫でる。まだ朝はこない。しかし集合時間はもうすぐだ。私は背を丸めて集合場で足を止めた。
遠征訓練。今回の出動は我らがロボロ隊長率いる通信兵だけだ。訓練という名の通信状況確認の実験に、私はため息をつく。
「はぁ…」
「またお前はそんなやる気なさそうにしとるんか」
「出た」
「おい、これでも上官やぞ」
どこからともなく顔を出したロボロ隊長を見て心底嫌な気持ちになり、ぐちぐちと私を叱る先輩の声に耳を塞いで、女子隊員の元へと向かうのであった。
.
..
油断した…っ！
まさか通信部隊が狙われるとは、思ってもみなかった──。
煙の立ち込める中で必死に情報をかけ集める。戦争において鍵を握るインカムを掴んで離さぬよう、爆発により捻った足を引きずりながら。
「お願い、繋がって」
無機質な機械音がギ、ギと音を立てるだけで一向に繋がらない。通信兵の多くが負傷し、今や生き残った者の方が少ないだろう。共に訓練に励んできた同期の屍を越えて、何度も、何度も、無線を繋げようと奮起する。
「…こちら…通信部隊本部…敵の襲撃あり…こちら……クソッ…！！」
ザーッとノイズ音しか鳴ることのない機械を、ついに放り投げた。
実験のための遠征訓練は、敵とってはいい獲物だったらしい。突然国に訪れた宣戦布告と同時に、隣国との国境線までやって来た私達へ襲撃は行われた。新兵器による爆撃は、最低限の物しか持ち込んでいなかった私達には大ダメージとなり今や壊滅状態だ。
たまたま夜間の訓練を日常化していた私が、キャンプ地の外に出ていたのは運が良かったとしか言いようがない。爆音が聞こえて戻ってくれば、目の前は人の海。焦げ臭い匂いが私を襲って、それから……。あまり思い出したくない光景に頭を抱える。
「国を守る、なんて言っておいてこんなザマか」
小さく吐き捨てた声を拾う者は誰もいない。
覚悟なんて後付けが丁度いい→←覚悟なんて後付けが丁度いい rbr （鳩山）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：軍パロを愛する連合軍
x他11人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2020年6月1日 12時
