【d!】断頭台で首を斬られたのでもう一度人生やり直します

後悔はたった一度でいいから ページ6

兵に背中を押された彼の声が遠くなる。

「A様。貴女は確かに王には相応しくなかったかもしれません。でも、一人の人間としては情深く、私は大変好ましかったんですよ」

　Aは彼のその言葉に下唇を噛む。自分がクビにしたこの執事に、何も返してやることが出来なくて、後悔だけが募った。

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　だからAは思う。
自分が断頭台に登るまでのこの期間に、たくさんの恩を彼に返そうと。決して変わることない忠誠を知っているからこそ、裏切り、擦り寄りの貴族社会の中で唯一の味方となってくれる彼に。

　Aは小さな頭で考えた。エーミールは学ぶことが好きな人間だ。従者となり主人に付き添うことになれば世界最高峰の教育を共に受けることが出来る。これが彼女が考えた一つ目の恩返しであった。

現にエーミールは最初こそ驚いてはいたが、内容を説明すると瞳を輝かせて準備にとりかかった。
前に学園へ共に行ったメイドは、Aが処刑されることが決まり一番に辞めた薄情な人間だったので、もしもの時、彼が側にいた方が都合が良かったのもあるが…それはまた別の話である。

「A様。お待たせしました」
「早かったのね」
「…最低限の荷物はいつもまとめておりましたから」
「ふふ、大丈夫よ。しばらくはクビなんて言わないから」

悪戯っぽく言えば安心したように彼は笑う。執事のリードに応えてAは馬車へと乗り込む。


──A・ラ・ストラスブールの二度目の学園生活が始まる。

　Aの学園においての目標はいくつか存在する。
一つ目は、断頭台を回避出来なかった時のための亡命先を見つけること。(世界最高峰の教育を施すノルベルト学園は世界各国の王族と貴族が集う場所だ。南から北までの国の面子が揃うこの場所を使わない手はないという訳だ)
二つ目は、亡命先と同じく、Aの信頼の出来る仲間を見つけること。理由は上文と同じである。
そして最後に三つ目は、恋できる相手を見つけることだ。前世では叶わなかった甘酸っぱい青春物語を、今こそ謳歌するのだ。

それに、とAは考えた。ストラスブールの王家が処刑されるのならば他国に嫁げば良くね、と安易なことを。自分は処刑から回避され、イケメンと結ばれる。これぞwin-winの関係…！

「ふふ。とっても楽しみですわ」

学ぶことを心の底から楽しみにしていると勘違いした彼女の執事は感動で目に涙を浮かべていた。

へっぽこ皇女とへっぽこ執事の誕生の瞬間であったのであった。

久々の学び舎で悲劇は起こる→←貰った恩は返すべし

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