見えるものは滑り落ち、 ページ46
男二人の手がAとシャオロンを掴む寸前で、何者かが横切る。
「がはっ」
「っ…だ、だれだ!」
たった数秒で体格のいい二人の男が宙に浮き、そして鈍い音を立たせて地面に伏せる。
「弱いなぁ」
深くフードを被った男が地面に尻をつけた男を無の感情で見下ろしていた。
「あんたら俺の姫君に手を出すなら、殺される覚悟あるんやろな」
地を這うような声が二人に蛇のように巻きつく。フードの奥底から翆の眼光がみえて、真正面からそれを見た二人はひぃ…と弱々しい声を漏らして逃げ出した。パンパンと手を叩いたフードの男は先ほどの気迫はどこへやら、Aへ「所詮ぼっちゃん。この程度で逃げ出すなんてたかが知れとるわぁ」と陽気に言った。
「ゾム、ありがとう。下がってよくてよ」
素直に頷き彼は姿を消す。唖然とするシャオロンに笑いかけたAは、すぐに表情を直してジベルを睨みつける。
「ジベル・リオルディ。あなたは、シャオロン様を笑う資格なんてないですわ」
「な、何を言って…」
「あなたは学年主席を取るぐらいに優れているのは存じております。しかし───あなたは、剣を握らなかった。ここの誰よりも弱いですわ。一位を取れなかったシャオロンよりも、よっぽど弱い。弱虫でしてよ!」
ぴしり、と言い切ったAの顔はどこか清々しい。
「A…」
「それに、人の心を金で買おうなんて思わないことですね。見えるものを与えていても結局残るものは何もなくてよ」
前世を経験したAだからこそ言える言葉に、完全に言い負かされたジベルはへなり、と地面に膝をつけた。
人間が利益関係で繋がってしまえば、利益が出なくなって離れるのは当然のこと。Aは前世を思い出し一瞬遠い目になったがすぐに意識をこちらに戻す。
「どうしてだ…僕の方がこの男より、よっぽど優れているというのに……どうして、。僕は学年主席でい続けた…それなのに、どうして俺よりも劣るはずのこいつはたった一度一位になれば、いいんだ。どうして…」
そういう彼の声はひどく弱々しい。
「まずは広く視野を持つべきですわ。商いが成功する秘訣は、たくさんの物を見て、たくさんの人を見ることですもの。流れる血だけで人を差別するような方が立派な当主なんてなりませんわ。」
「……おまえ、なんかにわかってたまるか…」
「えぇ、わたくしも分からないことが沢山ですもの。しかし、これからのリオルディ家には大いに期待しております。」
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (2023年5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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